新型コロナウイルス感染症が国内で確認されて1年。ワクチンや治療薬の開発は進んだものの、依然として感染拡大が続き、収束への道筋は見えない。未知のウイルスは、社会にどのような変化をもたらし、この先はどうなるのか? 人類と感染症の歴史に詳しい長崎大熱帯医学研究所の山本太郎教授(56)に聞いた。
短距離かマラソンか、分からない中でコロナ疲れ
――この1年の日本の新型コロナ対策をどう評価しますか。
「人口あたりの死者数は欧米ほど多くなく、全体として成功してきたといえます。しかし、『第3波』の感染は拡大を続け、緊急事態宣言が再び出され、深刻さは増しています。過去のパンデミックをみても、ワクチンの普及などによってどこかの段階で集団免疫をつくらないと流行は収束しない。『感染拡大を防げ』というメッセージを単純に出すだけで、感染を抑えることは難しいでしょう。何をめざすのか、いまどこにいるのか、ロードマップを示せていない点が課題ではないかと思います」
――めざすべきこととは?
「流行を抑制しつつ、医療崩壊を防ぎ、経済的に困窮する人を支援し、集団免疫をもつ状態に早く持っていくことだと考えます。クラスター(感染者集団)を見つけ、つぶすことは大事です。でもその先にある目標を示す必要があるでしょう。私たちが挑んでいるのが400メートル走なのか800メートル走なのか、42キロのマラソンなのか。序盤か中盤か、どの地点にいるのか。それによって走り方も心構えも違ってきます。政府は、感染拡大のそれぞれの時点で国民に状況を説明し、科学的知見に基づいた目標を示すべきです。それがあいまいになり、人々に慣れやコロナ疲れが広がりました。政府はわかりやすいメッセージを伝えるべきです」
――4千人以上が国内でも亡くなっている現状をどうみますか。
「二つの物語が進んでいます…
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