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原発立地自治体の核燃料税、震災後2.3倍 料金影響も

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室矢英樹 白木琢歩
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 原子力施設の立地自治体が条例を作って電力会社などに独自に行う課税で、東京電力福島第一原発事故の直後の2011年度に201億円だった税収総額が、20年度には467億円の見込みとなり、10年間で2・3倍に増え、事故前の水準を超えた。朝日新聞の調べで分かった。税金分は電気料金に影響する可能性がある。

 原発停止中や廃炉でも税収が確保できるように事故後に制度が変えられ、原発内にたまる使用済み核燃料への課税も強まった。立地自治体の原発依存は、事故10年で更に深まっている。

 自治体による課税は、原子力施設にかける核燃料税と、使用済み核燃料税がある。朝日新聞は、原子力施設がある13道県と立地市町村の課税状況を調べた。

 20年度の総額467億円のうち、核燃料サイクル施設が集中する青森県と、国内最多の原発がある福井県とで全体の6割を超えた。各地の原発が止まっている20年度の総額は、事故前で各地の原発が動いていた10年度の計403億円と比べても多かった。

 核燃料税は、原発を動かす際に入れる核燃料の価格に応じて課税する方式で始まった。事故の影響で各地の原発が止まり、11年度は立地6県で税収がゼロになる状況の中、福井県が11年秋、原子炉の出力に応じて課税する「出力割」を始めた。原発が止まっていても一定の税収がある仕組みで、他道県も続いて導入した。愛媛県は14年、廃炉になった原発にも出力割を課す制度をつくり、佐賀県などが続いた。

 使用済み核燃料への課税では、福井県が16年、県外への持ち出しを促すとする「搬出促進割」を導入。愛媛県と佐賀県が19年に、四国電力伊方原発九州電力玄海原発に保管されている使用済み核燃料についてそれぞれ課税を始めた。立地の伊方町が18年度から、玄海町が17年度から課税しており、同一の燃料に県と町が二重に課税する状況だ。両県の条例に同意した総務省は「確かに課税対象は同一だが、電力会社の負担は過重ではない」とする。

 使用済み核燃料を保管する中間貯蔵施設がある青森県むつ市は20年3月、課税条例をつくった。施設が稼働予定の21年度からの課税を想定し、5年間で93億円の税収を見込む。

 核燃料税を福井県が全国で最初に始めた1976年からの全立地自治体の税収は、20年度までに計1兆円を超えた。今後も拡大する見込みだ。

 課税強化の背景には、原発が止まって廃炉も進み、多くで再稼働のめどが立たず、立地自治体に入る固定資産税電源三法交付金が減っている事情がある。自治体の多くは「原発が動いていなくても、避難道路の整備などの財政需要がある」と説明するが、税収の使途を調べると、温泉施設の維持運営費など直接の関係がない支出先も目立つ。

 16年に電力の小売りが全面自由化されるまで、核燃料税や使用済み核燃料税分は、利用者が支払う電気料金に上乗せされていた。自由化後も、原発を持つ大手電力会社は核燃料税などの分を電気料金で回収することになり、料金に影響する可能性がある。(室矢英樹、白木琢歩)

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