「稼ぐ力に関してはまだまだ足りないという認識だ。しっかりやっていくべきだと考えている」

 昨年11月の記者会見。東京電力ホールディングス(HD)社長の小早川智明は、収益力の弱さを認めざるを得なかった。10月に公表した2020年9月中間決算は4年ぶりの減収、2年ぶりの経常減益となり、いずれも前年同期の実績を1割超も下回っていた。

 新型コロナウイルスの感染拡大による電力需要の落ち込みの影響もある。だが、より深刻なのは、完全自由化された電力小売市場での苦戦ぶりだ。16年から各家庭でも契約する電力会社が自由に選べるようになった。東電管内に新たに参入した新電力のシェアは20年6月時点で23・1%と全国で最も激戦地となり、事故前に約2千万件あった東電の家庭向け契約件数は、直近では1300万~1400万件にまで落ちた。

 その結果、東電の電力小売りを担う「東電エナジーパートナー」の中間決算の売上高は前年度から13・2%も減少。小早川は「関東圏はさまざまな小売事業者が集まるので、非常に競争環境が厳しい」と危機感をあらわにする。

 競争激化が遠因で無理な勧誘があり、9月には電力・ガス取引監視等委員会から業務改善勧告まで受けた。電話勧誘の委託先が、契約後の電気料金に関する虚偽説明などをしたためだ。もはや、かつての電力業界の盟主の余裕はみられない。

 東電が国の支援のもとで黒字を出せているのは、業務改善やリストラなどの合理化のおかげに過ぎない。社員数は、事故当時から2割減って約3万1千人。「乾いたぞうきんを絞っていたつもりが、まだまだ余裕があった」。東電関係者がそう認めるほど、コスト削減効果は大きかったが、問題はその先だ。

東京電力福島第一原発事故から10年近くを経ても、東電は実質国有化されたまま、自立した経営に戻れる見込みが立てられていません。事故処理の費用はどこまで膨らむか見通せず、電力自由化や脱炭素の波にもさらされ、経営環境は厳しさを増しています。頼りはやはり、原発の再稼働でした。

 「東電グループの成長の推進力…

この記事は有料記事です。残り1813文字
ベーシックコース会員は会員記事が月50本まで読めます
続きを読む
現在までの記事閲覧数はお客様サポートで確認できます
この記事は有料記事です。残り1813文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
この記事は有料記事です。残り1813文字有料会員になると続きをお読みいただけます。