第3回「風景」だった原発、お笑い使いリアルに 村本大輔さん

有料記事私は忘れない

聞き手・構成 小森敦司
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 止まっているゴジラのように見えた――。原子力発電所の存在を、そう例えたのは、2013年の「THE MANZAI」で優勝した実力派のお笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔さんです。関西電力の原発が立地する福井県おおい町の出身。ある時から、原発をネタにするようになりました。それはなぜか。日本のお笑いとは違う、と言われてもやめません。なぜなのか。

 ――2017年暮れに放映されたお笑い番組「THE MANZAI」で原発をネタにしましたね。「僕のことを知ってほしいんです。福井県出身なんです。おおい町……小さい地域に原発が4基あるんです。夜の7時になったら真っ暗になるんです。言わせてください。電気はどこへ行くー!」。視聴者は度肝を抜かれたはずです。

【連載】私は忘れない

 私は忘れない――東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から2021年3月で10年。いまも原発事故に絡んで発信を続ける著名人がいます。何を訴えているのか。理由はどこに。それぞれの思いを聞きました。

 「それまで一切、明かさず、秘めていたんです。それで、あの番組で自分の思っていることを、ぶっ放したんです。『THE MANZAI』は全国の人が見る場所。ディズニーランドのようなところだから、大きなニュースになるだろうと。ああいうところでやるしかなかった」

 ――経緯を伺いたいのですが、13年の「THE MANZAI」で優勝し、超人気者になりましたね。

 「優勝して毎日忙しくて、ずっとテレビの仕事でバタバタしてたんです。でも、(演出家の)テリー伊藤さんに『村本君のお笑いはすごいけど、半径5メートル以内だね』と言われたんです。

 そう、僕は本も読まず、高校も辞めて芸人になって、全部半径5メートル以内のネタをずっと。『バイトリーダー』のネタとか、全部、半径5メートル以内の自分の経験です」

 「それが、16年に(地上波の)テレビ出演を控え、インターネットのニュース番組に出て、ジャーナリストの方に出会ったり。それ以外で出会った方にも、いろいろ教えてもらって。急に原発が止まっているゴジラのように見えた。ちょっと怖い、みたいな」

 ――おおい町に住んでいたころは、原発はコンビニのような存在だったと。

 「当たり前にあるもの。社会学者の宮台真司さんが『仲間以外はみな風景』と言いましたが、原発も山の裏にある風景だったんです。僕は、原発とほぼ同い年です。原発(大飯原発1号機)ができて1年後に生まれている。

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 だから町が原発で潤っている…

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