国宝と育った33年 仏と向き合う「千賀子」と「龍華」
筒井次郎
参道から66段の石段をのぼると、寺を象徴する風景が現れる。
寺名の由来となった硅灰石(けいかいせき)の巨大な岩が、地面から突き出る。その背後に、多宝塔がそびえている。
多宝塔は、下層が方形、上層が円形の二重の仏塔。日本独自の様式だ。石山寺のものは、鎌倉幕府を開いた源頼朝の寄進で1194年に建立された。紫式部が寺で「源氏物語」を着想してから約200年後のことだ。現存最古で、1951年には文化財保護法に基づき、滋賀県内の国宝第1号の建物となった。
鷲尾遍隆(へんりゅう)座主(ざす)〈74〉の一人娘、千賀子さん(33)は境内の塔頭(たっちゅう)寺院で生まれ育った。
多宝塔は幼い頃から身近な存在だ。保育園の先生に連れられて訪れたことも覚えている。やがて日常の風景に溶け込んでいった。
将来僧侶になると決め、中学の時に得度した。僧名は「龍華(りゅうげ)」。弥勒菩薩(みろくぼさつ)が未来に龍華樹の下で悟りを開くという仏教の教えが由来だ。
ここから続き
ただ、普段は「千賀子」とし…
【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら