コロナ禍で消えた寺のにぎわい つなぐ糸「切らさない」

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安井健悟
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 古い町並みが残る大阪市平野区平野本町。高野山真言宗「全興寺(せんこうじ)」では、まだ夜が明けきらぬ午前6時過ぎから朝の勤行が始まった。

 底冷えする本堂内に住職の川口良仁(りょうにん)さん(73)の読経が響く。以前は息子らと一緒にしたが、新型コロナウイルスの感染予防で、今は1人。勤行を終え、がらんとした境内を見渡してぽつり。「今年は寺に来てくれる人がめっきり減った。やっぱり寂しいですね」

 聖徳太子によって建立されたとの由来があり、堺とならぶ自治都市、旧平野郷の歴史はこの寺から始まったと伝えられる。

 住職だった父から跡を継いだのは43歳の時。「仏の教えを伝える機会をつくらなければ、寺は見放される」。危機感から様々な「仕掛け」を打ち出した。

 その一つが地獄を再現した「地獄堂」だ。中に入り、閻魔(えんま)像の前にあるドラをたたくと地獄を紹介するビデオが流れる。できた1989年当時は子どものいじめや自殺が相次ぎ、仏の教えを体感で伝えようとお堂を改築した。映像の最後に、「ほかの人を悲しませてはならん。何より自分自身の命を大切にするのだよ」と呼びかける。

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 本堂の下には、ステンドグラ…

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