台湾海峡「中間線」とは 続いた暗黙、今後は懸念も

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小早川遥平
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 米中の緊張の高まりのなか、台湾海峡をめぐる攻防が激しさを増しています。先月23、24日に中国軍機が台湾西南域の防空識別圏に計20数回にわたって進入したのも、米国のバイデン新政権から対中強硬論が出ていることへの牽制(けんせい)と見られています。こうしたときによく話題になるのが、「中間線」の存在です。昨年も台湾海峡を繰り返し通過する米艦船に対し、中国軍機が中間線を越えて牽制するという事例が相次ぎました。そもそも中間線とはどのようなラインで、どんな意味を持つのでしょうか。大阪大学の真山全教授(国際法)に聞きました。

 ――台湾海峡の中間線とはどのような線ですか。

 海峡のほぼ中央に引かれた折れ線です。中間線を明示した公的な地図は意外と少なく、2004年に台湾の国防部長が立法院で中間線が通る緯度と経度を明らかにしたのが数少ない資料です。最近、よくニュースになりますが、実は国際法上は何の意味もない線なんです。

 ――何の意味もないのですか。なぜそんな線があるのでしょうか。

 1949年に蔣介石の国民党政府が大陸から台湾に逃れた際に、共産党側がそこを越えてきたら色んな対応をとるということを示すために海峡の真ん中に作戦用の線を引いたからです。当時は米軍も台湾を支援していましたから、米軍の航空部隊の戦術上もそのような線が必要でした。

 ――米軍が関わっているのですね。

 はい、当時はまだ米軍の支援を受ける国民党の軍の方が共産党の軍より強かったんです。国民党は「大陸反攻」と言って、また大陸に戻る気構えで爆撃や偵察、工作員潜入などを仕掛けていました。中国の大陸沿岸は台湾海軍がおさえていて、中国の船を妨害することもありました。米国としては国民党軍にあまり手を出してほしくないという気持ちがあり、中間線を引いて台湾海峡をどちら側からも渡らせない、という意味がありました。

 ――その線が今まで続いているのですか。

 はい。台湾側が勝手に引いた線ではありますが、これを越えたら敵対的な意図があるとか、挑発をしているだとか、政治的な意味を持ってきたことは間違いありません。

線の意味、失われる恐れ

 台湾海峡は意外に広くて、中国側と台湾側の領海は接していません。海峡の真ん中には排他的経済水域(EEZ)があります。EEZは公海と同じく、どこの国の航空機が飛んでも、船が通っても、潜水艦が潜っても自由です。中国と台湾は互いに正統な政府だと主張しているので、相手船を自国の船として捕まえられますが、他の国に対しては何も主張できません。台湾海峡は国際法の定める通過通航権が適用される国際海峡でもありません。

 ――なので、米国も航行するわけですね。

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 そうです。中国の目には、米…

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