第3回今世紀で消える?「世界の中心」ロンドンの独特なウナギ
ロンドン名物をインターネットで検索すると、「ウナギ」が出てくる。ただ、好物だという人には会ったためしがなかった。イーストエンドと呼ばれるロンドン東部の下町の小さな大衆食堂で、細々と売られているらしい。
持ち帰りで買い、初めて食べてみた。透明のゼリーに、幅2センチのぶつ切りのウナギが五つほど入った「ウナギのゼリー寄せ」は一皿約4ポンド(約550円)。皮も骨も付いたままで、口に入れると身がほろりとほどけ、歯ごたえはない。うっすらとした塩味と魚臭さを感じるが、繊細な味。悪く言えば、味がない。
それにしても、なぜゼリー寄せなのか。
「ゆでて放っておけば自然にゼリー状に固まるんだよ。ウナギの特徴さ」
ジョー・クックさん(68)は大きな容器に入った自慢のゼリー寄せをかき混ぜながら言った。老舗として知られる「Fクック」は、曽祖父のロバートさんが1862年に東ロンドンで創業した。ジョーさんは4代目にあたる。
作り方は至ってシンプル。ウナギのはらわたを取り、ぶつ切りにして10分ほど煮る。しっかり固めるため、商品にはゼラチンを使う。煮汁にゼラチンを加え、一晩冷蔵庫で冷やせばできあがり。ゼラチンを入れず、ゆでたままを温かいうちに食べる「シチュー」もある。こちらは、パセリをすりつぶした緑色のソース「リカー」をかけて食べるのが定番だ。
オランダからの輸入物が主に
かつての東ロンドンは労働者階級の街として知られ、貧困層も多かった。戦後、元の住民の郊外流出が加速し、代わりに様々な背景を持った移民らが入ってきた。文化の混合は新たなトレンドを生む。いまやアーティストらが好んで暮らし、おしゃれなブティックやカフェが集まる流行の発信地だ。
東ロンドンでウナギを出す大衆食堂は「パイ&マッシュ」と呼ばれる。文字通りビーフパイとマッシュポテトを出す店が、ウナギ料理も提供している。
ウナギのゼリー寄せの歴史は…
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