「小さなロックダウン重ねて」医療現場救う鍵 専門医は

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聞き手・中村通子
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 岡山県内は新型コロナウイルス感染が急拡大するなか、年末年始を迎える。医療現場の現状は。市民はどう行動すればいいのか。10月にはクラスター(感染者集団)も発生した感染症指定医療機関・津山中央病院で、感染症内科特任部長を務める藤田浩二医師に聞いた。(聞き手・中村通子)

 県が公表する病床使用率(15日現在で47・7%)は確定患者に限った数字。現場では、確定前の「コロナかもしれない」疑い患者も確定患者と同じ対応をする必要があり、この疑い患者の入院分を加えると、もうぎりぎりの状況になっている。

 高齢患者が増えたこともコロナ診療を難しくしている。春先以降の無症状や軽症者は若者ら元気な人が多く、ほとんどの場合、経過観察だけで済んでいた。だが、高齢患者は認知症など合併症がある人も多く、無症状や軽症でも生活介助などに人手が必要で、スタッフ不足につながっている。

 感染者がこれ以上増えていくと、もう一般診療を削るしかなくなる。医療崩壊につながる瀬戸際にいる。

 医療崩壊を防ぎ、重症患者を救うためには、まずは軽症者は地域の協力病院が対応すること。重症化したら、人工呼吸器や最後の切り札と言われる体外式膜型人工肺ECMO(エクモ)を備える拠点病院に転院。ここで峠を越したら再び協力病院へ、という役割分担の拡充が必要だろう。協力病院が増えるよう、行政には働きかけを頑張ってもらいたい。

 津山中央病院でのクラスター発生時、防護服やマスクなどの使用量がそれまでの10~20倍に跳ね上がった。県などの支援でしのげたが、各地の医療機関でクラスターが同時多発したら、医療物資は底をつくだろう。

 クラスターは、ウイルスが市中に蔓延(まんえん)しているから起きる。施設側だけの対策では防げない。職員も、業務時間外は市中で暮らす一般市民だから。ウイルスは、降り注ぐ銃弾のようなもの。まず「銃弾の数」、つまり市中の感染を減らす。そのうえで「被弾」、すなわちウイルスが施設に侵入をした場合、被害を最小にとどめる防御策を用意しておく。この双方がそろって初めてクラスターを防げる。

 防御に有効なのは、仕切りなどで職場を小区画に分けておくこと。濃厚接触エリアを限定することで、被害を最小に抑え、業務も継続できる。換気や、マスク・手洗い・距離確保などの基本を守るのは当然として、リスクを最小限にする鍵は「風邪への意識」だ。

 風邪とコロナの初期症状は、専門の医師でも見分けられない。風邪症状は全てコロナを疑う必要がある。「風邪かな」と思ったら、人に会うのを避けてほしい。症状の軽重や発熱の有無は関係ない。特に、医療や介護など他人に接する仕事の人や、持病などで重症化リスクがある人は少しでも症状が出たら、まず仕事を休み、すぐにウイルス検査を受けるよう勧めたい。

 過剰に思うかもしれないが、今はそれほどの非常事態だ。風邪への意識がクラスター防止の大きな力になる。

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 手洗い・マスク・換気・3密…

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