第1回撮影限界15分のウルトラマン スーツの中の悔しい思い

有料記事ウルトラマンの贈りもの 古谷敏の半生

聞き手 編集委員・小泉信一
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第1回 ウルトラマンの贈りもの 古谷敏の半生

 特撮テレビヒーローの金字塔「ウルトラマン」シリーズが、1966年に放送開始されてから、2021年でちょうど55年を迎える。昭和、平成、令和の3つの時代を駆け抜ける人気シリーズだ。初代ウルトラマンを演じたスーツアクター、古谷敏さんは、数々の怪獣や宇宙人を相手に、鮮やかな必殺技を決め、お茶の間の子供たちを魅了してきた。古谷さんに舞台裏を聞いた。

     ◇

 特撮テレビ番組「ウルトラQ」の放送が始まったのは、ちょうど55年前の1966年1月でした。最高視聴率は36・4%。日本全国に怪獣ブームを巻き起こすきっかけとなったドラマです。

 自然界の均衡(バランス)が崩れ、次から次へと奇怪な事件が起き、そこに人間が直面するのです。特殊な物質による突然変異が起き、太古の眠りから覚醒した怪獣たちが人間社会を混乱と恐怖に陥れました。番組名は「アンバランス」の予定でしたが、東京五輪の体操で流行語になった「ウルトラC」をもじって変更されたのです。「Q」はクエスチョン=謎の意味ですね。

 僕は、年齢500歳という宇宙人のケムール人と海底原人ラゴンを演じましたが、実はその前にも出ていたのです。古代の吸血植物ジュランが東京の都心に現れる第4話「マンモスフラワー」(66年1月23日放送)の回です。

 ロケは皇居のお堀で行われました。記録を調べると64年9月となっています。東京五輪が始まる1カ月前です。

 実はこのロケが「ウルトラQ」の最初の撮影だったのです。根っこのような物体がプカプカと浮いており、それを群衆が驚いて見ているのです。その中に背の高い人がいます。「やじ馬」というのが僕の最初の役でした。それにしても皇居のお堀を使うなんて……。いまの時代では考えられませんね。

 ――その撮影から約1年半後。66年2月にウルトラマンのスーツアクターとして声が掛かったそうですね。どう演じていいのか当初は大変悩んだと聞いています。

 「ウルトラマンは光の国からやってきた宇宙人だよ。正義の味方なんだよ」と番組制作のスタッフから言われてもピンと来ません。そもそも宇宙人なんて誰も見たことがないはずです。ましてや月光仮面でもゴジラでもスーパーマンでもないのです。何をモデルにしていいのか本当に悩みました。

実はゾフィーも僕でした

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 仕方なく、脚本家の金城哲夫…

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