第10回対中外交、疑念を抱く極秘文書も 歴史事実を残す大切さ

有料記事外交文書は語る 2020

倉重奈苗
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 日本にとって対中外交のかじ取りの難しさは、30年前も今も変わらない。

 23日公開された1989年6月4日の天安門事件に関する外交文書からは、当時の日本政府関係者の腐心がうかがえる。中国共産党政権が学生の民主化要求を武力で弾圧したことに衝撃を受けつつ、中国を孤立させないよう各国への働きかけに奔走していた。

 外務省情報調査局が作成した内部の検討記録には「外からの圧力で中国を変化させることには限界」「中国を追い込まず『メンツ』を保てる逃げ場を残してやる」と記されており、今にも通じる。

 当時、同局企画課長として中国課とともに対処方針作成に携わった宮本雄二氏(元中国大使)は「中国を動かして日本がやりやすい状況を作るにはどうしたらよいか。相手の変化を促すという発想で取り組んだ」と振り返る。

 公開されたものの中に奇妙な文書がある。「極秘 無期限」と押印された「中国政府声明(案)」。天安門事件後の6月26日に中国課長が中国側と懇談した際の記録と一緒のファイルにとじられていた。国際社会の批判を和らげるため中国が対外的にどう立場を表明すればいいか、日本側が助言すべく作成したとみられる。「今後も合法的な民主化要求は受け入れる」といったことまで書かれている。

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 外交文書の専門家は「この案…

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