新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が医療機関などで発生し、院内感染で感染者数が急増した北海道旭川市。コロナ患者の治療で人手が足りなくなり、自衛隊が災害派遣される事態にもなった。医療現場で何が起きているのか。治療にあたった関係者の話から、現状と課題を探った。(本田大次郎、原田達矢)

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 旭川市で医療体制が逼迫(ひっぱく)したきっかけとなったのが、11月初めの吉田病院でのクラスター発生だった。寝たきりの高齢者らが多く入院し、院内では感染対応に忙殺されるなか、患者だけでなく職員への感染も急速に拡大した。

 医療支援のため、旭川市には厚生労働省の災害派遣医療チーム(DMAT)が派遣され、11月下旬から活動を始めた。

 DMAT事務局の松田宏樹さんによると、吉田病院では活動当初、病棟の1~7階すべてが感染者のいる「レッドゾーン(感染エリア)だった」という。陽性者の一部を市内の他の病院へ転院させ、陽性者や濃厚接触者を院内の一部に集める作業を進め、少しずつグリーンゾーン(非感染エリア)を増やした。

 同院では計210人が感染したが、現在院内に残された陽性者は20人を切り、新規感染者がゼロの日もある。「一時の大きな山は越えた。下火になった火を再炎上させず、徹底的に抑え込むことが必要」という。

 吉田病院に続き、11月下旬にクラスターが発生した旭川厚生病院。感染者は計300人を超え、国内の医療機関では最大規模のクラスターとなった。同院では当初から3階と5階にコロナ病棟をつくり、患者の陽性者や濃厚接触者を移動させてきた。陽性者が出た場合、同室の患者が濃厚接触者なのかどうかを確認しながら対応。さらに職員の動線についても、国立感染症研究所の専門家が助言した。

 現在、新規感染者は減り、「医療機関としての機能回復をどう図るか、を考える時期に来ている」と話す。最近の感染者は、「ほとんどの人が陽性者の濃厚接触者で、健康観察中の発症。想定の範囲内」という。同院は地域の基幹病院の一つだが、クラスター発生で一般診療や入院を一時停止、地域医療に大きな影響が出た。「病院の建物が大きく、職員も多いので、グリーンゾーンを完全に切り離すことができる」といい、現在、国立感染症研究所の助言のもと、一部診療再開が検討されている。

 もう一つの大規模クラスターが…

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