コロナ禍でもイベントOK 先端のシンガポール流に迫る

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シンガポール=西村宏治
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 新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けた産業のひとつが、国際会議や展示会などを催すMICE産業だ。そのアジアの中心地シンガポールで、安全を確保しながらイベントを運営する取り組みが進む。入場前の検査や参加者の数やスペースの確保、オンラインとのハイブリッド開催といったさまざまな工夫がされている。

MICE

国際会議や大規模な見本市、イベントなどのこと。会議(Meeting)、報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際会議(Convention)、展示会やイベント(Exhibition/Event)の頭文字を並べた用語。

参加者分散、スペース確保

 「会場ではこれを身につけておいてください」

 11月25~26日にシンガポール有数の統合型リゾート、マリーナベイ・サンズで開かれた旅行産業の国際展示会「トラベルリバイブ」。コロナ禍の中でいかに旅行やMICE産業を再開できるかをテーマにしたイベントでは、来場者全員に日本の「お守り」のような形をした無線端末が配られた。近距離の無線通信で、端末どうしのすれ違いを記録する。「もし来場者から感染が出た時に、すばやく確実に接触者を見つけるためです」と担当者は言った。

 新型コロナウイルスの流行で4月から6月に外出制限を迫られたシンガポール。経済活動の再開後、大規模な会議イベントが催されるのは、これが2回目だった。参加者は2日間で約1千人。国外の14カ国からも65人が集まった。

 徹底していたのは人を分散させ、スペースを取ることだ。

 参加者はグループごとに分けられ、海外からの参加者はまず20人、抗原検査を受けて陰性であれば国内からの参加者とともに50人ごとに行動するようにした。グループの中に感染者がいた場合のクラスターを最小化する狙いだ。

 数百人が入れる講演ホールは、50人ごとに区画を分けて距離を置いた。展示会場でも、ひとりあたり10平方メートルの空間が取れるよう入場者を制限。出展者と来場者の打ち合わせのためには、商談ブースを設け、少人数に限って利用できるようにした。

 シンガポール政府観光局のトップ、キース・タン氏は、①イベント出席者の旅行中の感染制御、②混雑の密度の制限、③個人間の接触の制限、④安全で清潔な環境の準備、⑤コロナに関連した緊急事態への対応の5点を、イベントの主催者に求めていると説明。「地元のMICE事業者の助言や、国際的にベストな実践例も踏まえ、健康と安全を達成するための指針を出している」という。

抗原検査→イベント参加

 国際的なMICEの復活は、国内旅行市場が小さいシンガポールにとっては、重要な一歩だ。イベントに登壇したチャン・チュンシン貿易産業相は「シンガポールは旅行産業を維持するために国内の人口や旅行に頼るわけにはいかず、閉じこもる選択肢がない。リスクをなくせない以上、リスクを管理する方法を学ぶ方が生産的だ」と訴えた。

 こうした姿勢は、世界の注目を集めてもいる。世界の企業トップや政治家が集まる「ダボス会議」を運営する世界経済フォーラムは12月、来年の年次総会をスイスのダボスではなく、シンガポールで開くと発表。「新型コロナ感染拡大の現状に鑑み、開催に最も適した場所であると判断した」と説明した。

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