陸上は無理、ならば洋上しかない…ぶれるイージス代替案

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伊藤嘉孝 寺本大蔵 土居貴輝
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 陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入断念から半年、「陸上配備」のメリットを訴えてきた政府が代替に選んだのは、真逆の「洋上配備」だった。どんな船にするのか、具体像やコストは見えず、着地点はなお定まらぬままだ。

 「本当に着地できるのかわからない。難しいのはここからだ」。18日、イージス・アショア(陸上イージス)の代替として、海上自衛隊が現在8隻保有するイージス艦とは一線を画す「イージス・システム搭載艦」2隻を建造する方針が閣議決定された。だが、防衛省担当者の顔は晴れなかった。

 「導入すれば、わが国を24時間365日、切れ目なく守るための能力を抜本的に向上できる」(防衛白書)。弾道ミサイル防衛(BMD)の強化のため、安倍政権が陸上イージスの導入を決めたのは2017年末のことだ。

 この頃、北朝鮮による脅威が高まっていた。16~17年の2年間に計40発の弾道ミサイルを発射。一部は日本上空を通過し、全国瞬時警報システム(Jアラート)による避難が呼びかけられた。北朝鮮はこの間、計3回の核実験も実施。核兵器の弾頭化にも成功したとみられていた。

 弾道ミサイル発射の兆候はつかみにくいとされる。海上自衛隊は、イージス艦を日本海に張り付け、乗組員が日夜、不意の発射に備えたが、補給や整備の面で限界に近かった。官邸主導の陸上イージスの導入にはこうした背景があった。

 政府は18年、配備候補地に秋田、山口両県の陸上自衛隊演習場を選定した。だが、その後、防衛省によるずさんな調査や誤った説明が発覚。地元の不信を招くなか、河野太郎防衛相(当時)は今年6月、急きょ計画停止を表明。迎撃ミサイルから切り離された推進装置(ブースター)の安全対策に費用と期間がかかりすぎる、という理由だった。与党のベテラン国防族議員にも、陸上イージスの運用を担う自衛隊幹部にも事前の相談がない「寝耳に水」(防衛省幹部)の決定だった。

装備品活用が前提 議論進まず

 陸上で別の配備地を探すのか。海上配備を目指すのか。代替案をめぐり、政府内の検討に加え、自民党国防部会を中心に防衛政策に詳しい国会議員、海自OBも入り交じった大論争に発展した。だが、議論は迷走する。

 その大きな要因が、陸上イー…

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