列車の来ない海沿いの踏切、向こう側には亡き妻がいる

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高田誠
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 太平洋が見渡せる北海道釧路市の弁天ケ浜に「踏切」が設けられた。でも、線路もないし、列車はもうやってこない。

 黒と黄色のしま模様の警報機付き踏切の向こうには、青い海が広がる。白い波が音を立て繰り返し打ち寄せている。

 踏切は一度は撤去されたが、今年10月に再び姿を現した。市内に住む花田弥作さん(85)にとって、踏切は亡き妻栄さんとの思い出そのものだ。

 釧路市の太平洋炭礦の石炭を運ぶ鉄道は1925年に開業した。約4キロの貨物線は「石炭列車」と親しまれ、日本の高度経済成長とともに1日10本以上運行した。弁天ケ浜の海沿いも列車が駆け抜け、佳景の名所のひとつだった。

 道職員で29歳の花田さんが、2歳下の栄さんと人の紹介で出会ったのは65年の春だった。赴任先の標茶町から釧路市の栄さんに会いに来た。

 初めてのデートの場所に選んだのが弁天ケ浜だった。

二人を結んだ海岸

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 2人は踏切を越え、海岸に下…

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