「倒産も考えた」本多劇場 総支配人、コロナ禍を語る

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冨田悦央
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 コロナ禍はエンターテインメント業界にも大きな打撃を与えました。「演劇の街」東京・下北沢(しもきたざわ)で、八つの劇場を運営する本多劇場グループ総支配人の本多愼一郎さん(45)に、2020年の演劇界、とりわけ小劇場が直面した危機と再開への足取りなどについて聞きました。

 ――政府の緊急事態宣言を受けて、本多劇場グループは4月7日から全館休館に追い込まれました。

 舞台装置を搬出するだけで、「こんな時に劇場を開けるのか」とお叱りを受けました。演劇を続けられる環境ではなかった。劇団側が上演を中止するとキャンセル料が発生し、小劇団の存続を脅かす。そうならないよう、自ら休館を決断しました。お金があって趣味でやっていると思われるかもしれませんが、劇場運営が本業ですから無収入になるわけで。閉館、倒産まで考えました。

 ――不安で悔しかったと思います。

 演劇などは人が生きていく上で必要ないという意見があるのは承知していますが、舞台芸術のない社会で本当にいいのでしょうか。生の芝居は時に人生を変えるほど感動的で、人の心を豊かにします。観客と俳優が同じ時と空間を共有する劇場に、人がいなくなるのはつらく寂しいことでした。

 ――一部の劇場を閉じる選択肢もあった?

 劇場でなくなった空間を、再び劇場として生き返らせるには大変な労力が必要です。少し休むと劇場の空気が変わってしまう。生き残りのため借り入れにも踏み切った。換気装置の追加など十分な新型コロナウイルス対策をして、できるだけ早期の再開を目指すという結論に達しました。感染拡大防止の対策を徹底すればいつか再開できると信じていました。

 ――全国の小劇場が「本多劇場はどうする」と見守る中、お手本のないコロナ対策を考えていきました。

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