聞き手・神谷毅
北朝鮮は米国のバイデン次期政権とどう向き合おうとするのか。韓国サムスングループのシンクタンクで北朝鮮研究の責任者を務め、北朝鮮当局者と何度もやりとりした経験を持ち、現在は北朝鮮の農業を支援する市民団体の事務総長、董龍昇(ドンヨンスン)氏(57)に聞いた。
ドン・ヨンスン 1989年から2015年までサムスン経済研究所で経済安保チームを率い、大統領府や国防省などの政策諮問委員も務めた。現在も北朝鮮の支援に携わる市民団体の事務総長として、北朝鮮の情報を知りえる立場にある。
――北朝鮮はバイデン次期政権について何の言及もせず静かなままですね。
「北朝鮮は米国との関係を自ら動かそうとはしないだろう。米国で政権交代があれば北朝鮮がまず軍事行動に出るというのは、過去の話だ。今は米国がどう出るか注視し、その行動に合わせる構えだろう」
「北朝鮮は2019年末の朝鮮労働党の中央委員会総会で対米戦略の原則を明確にした。米国との関係改善までには長い時間がかかるので、自力更生を通じて耐える国力をつけるというものだ。また、米国との協議再開の原則については、金正恩(キムジョンウン)党委員長の実妹、金与正(キムヨジョン)党第1副部長が7月、米国が敵視政策をやめることを条件とした。国内経済の改善に集中しながら、敵視政策に変化があれば動くのが原則だ」
――バイデン政権の北朝鮮政策の優先順位が低ければ、軍事的行動に出るとの意見もありますが?
「優先順位は北朝鮮にとって重…