第2回放浪の日々、自殺考えた母 でも「飛び降りられへん」

有料記事破れたセーフティーネット

諸永裕司
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 スマートフォンが震えたのは2019年5月ごろ、夜の10時を過ぎていた。大阪府東部に住む女性(67)が手に取ると、画面に「公衆電話」と浮かび上がった。

 「おかあちゃん、一晩だけ泊めてぇな」

 電話をかけてきたのは、30年来の友人だった。

 お互いの子どもが同じ年で、保育園で知り合った。一緒にバーベキューをしたり、釣りやハイキングに行ったり。一時期、同じパート先のプラスチック関連会社で働いたこともある。

 だが、しばらくぶりに聞く電話の声は、切羽詰まっていた。借家の水道が止まり、家主から追い出され、駅近くの公園などで野宿をしているという。

 断ることはできなかった。まもなく、友人は息子とともに自転車をこいでやってきた。その母(57)と息子(24)はこの訪問から約9カ月後、大阪府八尾市のアパートで、ともに遺体で見つかることになる。

 女性は、訪れた2人に風呂を貸し、食事も作った。息子はぜいたくを言わなかった。「お母ちゃん、のりがあったらええやんか。おなかいっぱいになったらええ」

今年2月、大阪府八尾市のアパートで、住人の母と息子が遺体で見つかった。その2カ月ほど前、生活保護を受けていた母は市役所に保護費を受け取りに現れず、連絡が取れなくなっていた。そして、独立して働いていると思われていた息子とともに、ひとつ屋根の下で息絶えていた。悲劇なのか、自己責任なのか、それとも――。二人の足取りを追うルポの2回目。

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 人心地がつくと、母はこう漏…

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