里山眺める あなたはだあれ? ようこそ、かかしの里へ

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文・山田暢史 写真・迫和義
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 大八車に腰をかけ、色づく里山を眺めるようにたたずむその人影は、動かない。ようこそ奥秩父の「かかしの里」へ。

 東京湾に注ぐ荒川のはるか上流に位置する埼玉県秩父市荒川贄川(にえがわ)。坂道を上ると見晴らしのいい広場に出た。秩父のシンボル、武甲山や荒川渓谷の豊かな自然が広がる。「きれいですね」。旅行者らしき2人組に声をかけたが返事はない。それもそのはず、穏やかな表情をした、かかしだった。

 集落は、江戸時代に「三峯社講中」や諸国商人らで栄えた宿場町・贄川宿だ。明治時代に来日したドイツ人の地質学者エドムント・ナウマンが地質調査で訪れ、立ち寄った宮沢賢治幸田露伴も眺めを称賛したという。

 1930年に鉄道が近くの「三峰口」まで延伸されると、街道の宿場は衰退。この地でも過疎化が進み、集落の住民は現在、35世帯の79人。荒川沿いに広がる街並みには、江戸時代末期から明治期にかけて建てられた元旅籠(はたご)や古民家が多く、秩父と甲州を結ぶにぎやかだった往還の名残がある。

 集落のにぎわいを取り戻そうと、地元の主婦らが中心となって、かかしの里作りを始めたのは2016年のこと。「天空の村」とも呼ばれる徳島県三好市東祖谷(ひがしいや)で取り組んでいたかかしの里作りを雑誌で知り、手本にした。鳥獣害対策の狙いもあるという。

 主婦らの代表を務める深田澄子さん(67)によると、集落には住民よりも多い約100体のかかしがある。四季に合わせて服を変えたり、「飾る」場所を移したり。毎週木曜には、かかし作りに精を出し、作業が終われば、みんなでお茶を楽しむ。深田さんは「いい憩いの場になっています」。

記事後半では、地元で人気のグルメスポット紹介や会員限定のプレゼントもあります。

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