GoTo恩恵、先行きに不安 短観、宿泊・飲食が改善

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高橋尚之 山下裕志 北川慧一 神沢和敬
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 日本銀行の12月短観は、大企業の製造業・非製造業ともに2四半期連続で業況判断指数(DI)が改善した。だが、政府の「Go Toキャンペーン」による消費下支え効果が大きい非製造業では、感染の再拡大が影を落とす。一方、世界的な需要持ち直しで急回復する製造業では、下請けに恩恵が届いていない。

 栃木県日光市。12月最初の日曜日の6日、首都圏からの玄関口となる東武日光駅は観光客でにぎわっていた。都内の大学生、鳥越健太郎さん(20)は旅費の35%が補助される「Go To トラベル」を使って友人2人と1泊2日の旅行に来た。「割引がなければ、来年の春休みまで旅行しなかったと思う」

 日光東照宮近くの旅館「日光 季(とき)の遊(ゆう)」は、11月の週末がすべて満室に。下旬の3連休は特に観光客が多く、「旅館前の通りが人であふれた」(支配人の荒木正聡さん)ほどだった。

 市観光協会によると、低迷していた市内の宿泊客数は、GoToの東京追加が9月に発表されると潮目が変わった。前年比で、9月は8割、10月は9割ほどにまで回復。紅葉のピークの11月も堅調だった。

 恩恵は旅館やホテル以外にも及ぶ。

 東武日光駅前の土産物店「八汐(やしお)」では、低迷していた売り上げが10、11月、8割以上にまで回復した。店長の加藤亮太さん(40)は「10月になって売り上げがわっと上がり始めた」。旅費の15%分をもらえるクーポン券を使い切るために、もう一品追加する人も多く客単価も上がった。

 トラベルを中心としたGoToによる消費の持ち直し傾向で、12月短観では大企業・非製造業の「宿泊・飲食」「対個人サービス」「運輸・郵便」などのDIが大きく改善した。

 だが、感染再拡大でこの動きが続くかは見通せない。市観光協会によれば、東京発着の旅行で65歳以上の自粛要請が出た2日以降、年末年始の予約キャンセルが目立ち始めた。福田栄仁事務局長は「感染がさらに広がれば、ガクンと落ちかねない」と心配する。

 菅義偉首相は14日、28日から来年1月11日までGo Toトラベルを全国で停止すると表明。事業自体は来年6月末まで続けるものの、巨費をつぎ込むキャンペーン後の消費の冷え込みを懸念する声もあがる。九州のある旅館の若女将は「短期的な回復はありがたいが、GoToはカンフル剤。怖いけどひた走っている感じだ」と話す。(高橋尚之、山下裕志)

下請けに回らぬ恩恵

 高級車ブランド「レクサス」をつくるトヨタ自動車九州の宮田工場(福岡県宮若市)。山あいの建屋の生産ラインでは11日、次々と流れてくる車体に従業員が手早くエンジンや内装などの部品を取り付けていた。部品を載せた無人搬送車も、従業員の間を走り回る。世界のレクサス生産の半数以上を担うこの工場は昨年度、約45万台をつくった。9割が輸出向けだ。

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