突然変異した新型コロナウイルスがミンクから人に感染したとして、デンマーク政府は11月、最大1700万匹のミンクを殺処分すると発表して、処分を進めました。殺処分後に埋められたミンクが、死体から出たガスによって地上に姿を現す現象も起き、「ゾンビ」になぞらえて大きな話題にもなりました。そもそもデンマークでこれほど多くのミンクを飼育していたことを知らなかった人も多いのではないでしょうか。カナダでも今月、ミンク農場で作業していた人の感染が確認されています。感染症の流行によって、家畜が処分されるのはどんな判断で、どうして行われているのでしょうか。二人の専門家に聞きました。
デンマークの毛皮産業がピンチ
毛皮産業の歴史や技術を研究する神戸大学の大石侑香講師(文化人類学)は、デンマークでのミンクの大量処分は「毛皮産業に大きな影響を及ぼす」と指摘しています。
――デンマークのミンクの毛皮生産は有名ですか。
毛皮の生産量は、おおよそ欧州が50%、中国が25%、残りを米国やカナダ、ロシアなどが占めています。欧州の毛皮生産者団体「ファー・ヨーロッパ」の2015年の報告では、年間4600万枚の毛皮の生産のうち、ミンクが4300万枚と大半です。なかでもデンマークは1780万枚で圧倒的に多い状況です。デンマークのミンク毛皮の生産量は1980年代くらいから大きく伸び、世界で最も多くなりました。
――どうして欧州で多いのですか。
ミンクの飼育は北米で19世紀末に始まり、1930年代に酪農が不況だった北欧で導入されて発展しました。当時は重要な外貨獲得のための手段で、各国の政府が農家に推奨し、定着していきました。
――毛皮文化の歴史は長いのですか。
大量処分は避けられなかったのか
古くから毛皮は富と権力の象…
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