上田雅文
この夏、千葉県の印西市と白井市に計6千万円の寄付があった。寄付したのは舌がんで闘病生活を送っていた中学校の国語科教諭。ひと月後、59歳で帰らぬ人となった。「子どもたちの本の購入費に充ててほしい」。そんな願いが込められていた。両市は来春、この先生の名をつけた文庫を全小中学校に設ける。
この教諭は千葉県八千代市の宮下豊さん。熱心な先生で、白井中(白井市)に勤務する約8年間はほぼ毎日、生徒へのメッセージが入った学級通信を配った。
印旛中(印西市)で教壇に立っていた2018年8月、歯科医院で舌の異常の指摘を受け、病院で初期の舌がんと診断された。手術し、約半年間、自宅で療養。翌19年1月に復職した。3年生の授業を受け持っていたが、8月に再発し、再び休職した。
宮下さんは闘病生活を送りながら、学校の廊下に読書コーナー「読んでみよう、この一冊」をつくった。自費で買った本を並べ、一つひとつに紹介文を添えた。「わたしの町は戦場になった」「震災と鉄道 全記録」「中学時代にしておく50のこと」など、紛争、東日本大震災を扱った本から自己啓発本まで、ジャンルは様々だ。
今春のことだ。「子どもたちのために寄付をしたい」。舌をうまく動かせない宮下さんは、つらそうな声で、三浦明久校長(56)に相談した。
独身だった宮下さんは、約35…