「妊娠ばれたら帰国…」双子の乳児死体遺棄 実習生起訴

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屋代良樹
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 熊本県芦北町の自宅に双子の新生児の遺体を放置したとして、熊本地検は10日、ベトナム国籍の技能実習生レー・ティ・トゥイ・リン容疑者(21)を死体遺棄罪で起訴した。調べに「妊娠がばれたら、ベトナムに帰らなければならないと思った」と供述したという。実習生の妊娠をめぐる問題は全国で起きているが、制度の周知や支援は進んでいない。

 芦北署などによると、リン容疑者は2018年8月に来日し、芦北町内の農業会社で実習していた。11月中旬ごろ、自宅で双子の男児を出産し、亡くなった2人を室内の箱に入れて放置。同月19日、死体遺棄容疑で逮捕された。

 芦北署によると、リン容疑者は10月ごろから体調を崩し、それに気づいた雇用主が通院をすすめても、かたくなに拒んだという。妊娠の可能性についても否定し続けた。結果、誰にも打ち明けることなく一人で自宅出産した。

 法務省入国管理局によると、外国人技能実習生には日本人と同じく労働基準法などが適用される。妊娠出産しても在留資格は失わず、それを理由とした不当な処遇も違法となる。

 しかし、富山で11年、中国人技能実習生が妊娠を理由に強制帰国させられそうになり、流産した。こうした事態を受け、入国管理局などは19年3月、技能実習生を受け入れる監理団体に対し、妊娠などを理由にした不利益な扱いを禁止する通知を出した。

 それでも、同様の悲劇は後を絶たない。19年1月、自宅で出産した男児を川崎市の民家に置き去りにしたとして、中国人技能実習生の女性が保護責任者遺棄の疑いで逮捕された。今年春にも岡山で、ベトナム人技能実習生の女性が堕胎や胎児の死体遺棄の疑いで逮捕された。いずれも妊娠を理由に帰国させられるのを恐れてのことだった。

 今月10日、弁護人らによる会見で、リン容疑者が監理団体から日本の労働法や権利について何も説明を受けなかったと主張していることが明らかになった。松野信夫弁護士は「外国人技能実習制度は建前で外国人に技術を身につけてもらうことを趣旨とするが、実際は日本の労働力不足を低賃金で補っているのが実態」と指摘。「起訴は極めて残念。今後は裁判所に外国人技能実習生が置かれている現状をアピールして早期保釈を目指す」と話した。(屋代良樹)

■「権利守られている」安心感…

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