さまよう冬の街「地獄でした」 炊き出しに集う若者たち

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大山稜
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 繁華街がイルミネーションで彩られるようになった11月下旬の夕方。暗やみに包まれた東京・池袋の公園で、路上生活者らを支援するNPO法人「TENOHASI」のスタッフがほのかなライトを頼りに弁当を配る準備を始めた。冷たい風が吹きすさび、気温が一けたまで下がる。思わず身を縮めるほどの寒さでも、弁当を配り始める頃には、1メートル間隔で並んだ列が幾重にも折り重なっていた。

 白いごはんにコロッケと焼き鳥。「久々の、ちゃんとした食事です」。初めて訪れたという黒いパーカ姿の男性(38)が、弁当を手に話してくれた。財布に入っている金は千円に満たないという。「コロナのせいです。ぱったり、仕事がなくなりましたから」

 5年前に住み込みの新聞配達のアルバイトをやめ、派遣会社に登録。週に5日、主に物流会社の倉庫で商品整理の仕事をしながら、新宿や池袋のネットカフェを転々としてきた。認知症を抱える母親しか「緊急連絡先」に登録できる人がいないため、アパートは契約できないでいたが、仕事は途切れず、月収は20万円を超えることもあった。

 しかし、新型コロナの感染拡大の「第1波」に見舞われた今春、仕事が急に減り始めた。多くても週2日ほど。15万円ほどあった貯金を取り崩しながら暮らしていたが、「第2波」がやってきた夏にはほぼ底を突いていた。

 たまに入る仕事の収入でしのいでいたところに、これまでを大きく上回る「第3波」が襲ってきた。派遣会社に勤務希望のメールを何度送っても、「今はない」と即答される。感染防止のため、派遣先の現場では人手を絞っていると聞いた。

 半日2千円ほどのネットカフェの料金が払えず、外で過ごす日が増えた。新宿駅の地下通路の端っこで、じっと座り込む。シャッターが閉じれば、震える体をさすりながら街中を歩き続けた。新宿周辺の公園のベンチで、ひたすら寒さをこらえる。通行人や警察官から不審な目を向けられないよう、道で拾った文庫本を開き、読むふりをした。「寝てる間にバッグが盗まれたら」と2、3日、眠らないこともあった。

 「俺、明日はどうなってるんだろう……」。そんなことを考えながら、日が昇るまでの時間をやり過ごす。「地獄でした。このまま真冬を迎えれば、体がもたなかった」

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 12月上旬、「TENOHA…

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