第5回周辺国には「見られている」 自衛隊の災害派遣と新領域

有料記事自衛隊と災害派遣

倉重奈苗 編集委員・藤田直央
[PR]

「災害大国」日本ではいま、救援・復旧活動で自衛隊への依存が増している。それに加え、中国や朝鮮半島といった安全保障の最前線に対峙(たいじ)しているのが、九州・沖縄を管轄する陸自西部方面隊(約2万5千人)だ。そのトップである西部方面総監を務めた本松敬史・元陸将が8月の退官後、初めてメディアのインタビューに応じた。陸自の中枢ポストを歴任し、自衛隊制服組トップの統合幕僚長を直接補佐する副長も務めた立場から、災害派遣の実態や防衛任務との両立について現場の実情を語った。貴重な証言を、4回の連載で紹介する。今回は最終回。

 政府が南西防衛を重視する中、陸上自衛隊で九州・沖縄を管轄する西部方面隊は中国・北朝鮮への警戒を絶やさない。この夏、熊本豪雨での災害派遣と同時並行で部隊をやりくりした背景には、国防と災害対応を一体で考える新たな構想があった。西部方面隊のトップである総監を8月まで務めた本松敬史氏(58)へのインタビューを続ける。

「逆に我々もしっかり見ていた」

 西部方面隊の主要部隊は第4師団(司令部・福岡県春日市)、第8師団(司令部・熊本市)、第15旅団(司令部・那覇市)だが、熊本豪雨での災害派遣は基本的に第8師団で対応した。第4師団と第15旅団は動かさなかったという。

 「次の豪雨に備えるとともに、半島(北朝鮮)正面と南西(中国・台湾)正面への防衛警備の構えを取るよう命じました」と本松氏は話す。自衛隊制服組トップで東京の防衛省にいる山崎幸二統合幕僚長とリモートで連日協議し、陸自の他方面隊や海自、空自の支援を得て、約1カ月間その態勢を保った。

 「自衛隊が防衛態勢を維持しつつ、大規模災害に対応できる実力を周辺国に見せつける。日本に手を出しにくいと思わせることが抑止力につながります」。そうした構想で災害派遣にあたって自衛隊を運用するようになったきっかけは、東日本大震災だった。

ここから続き

 「当時は米軍も『トモダチ作…

この記事は有料記事です。残り2060文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら