第10回農村地帯の「トランピズム」 大地に生きる人々の怒り

有料記事ポストトランプ 世界の視線

アメリカ総局員・青山直篤
[PR]

アメリカ総局員・青山直篤

 私は地方の支局にいた20代のころから、農村や中山間地域の状況に関心を持って取材してきた。自由貿易や市場競争は国を富ませるが、「敗者」との格差や不公正を生み、民主主義の土台を揺さぶる。農村にはこの緊張がもっとも生々しい形で表れる。だからこそ、2018年に米ワシントンに赴任してからも、農村地帯での取材を続けてきた。

 今回の大統領選では4年前と変わらず、米農村部はトランプ大統領を固く支持した。これを頑迷な「田舎者」のトランプ信仰と一蹴するのは誤りだ。その声にバイデン次期米大統領が真摯(しんし)に耳を傾けなければ、「第2のトランプ」が登場し続けることになるだろう。

トランプ氏が消えても残り続ける」

 米大統領選直前の10月24日、トランプ氏の集会を取材するため、中西部オハイオ州の空港から農村地帯を車で走った。印象に残ったのは、沿道の農家の庭に立つヤードサイン(宣伝板)のうち、トランプ氏支持を呼びかけるものが圧倒的に多かったことだ。

 農村地帯でのトランプ氏の集会は、活気のない街に若者たちが戻ってくる夏祭りのような雰囲気だ。大勢の人々が何時間も前からトランプ氏の到着を待ち、虚実がないまぜの「ショー」を楽しむ。そして、終わった後の夜。帰途につく人々の姿には「うたげの後」の何とも言えない寂しさが漂う。

 大統領選はバイデン氏が勝利…

この記事は有料記事です。残り2813文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら