値段も一応あるけど…人情が魅力、日本一早い朝市を歩く
「日本一早い」がキャッチフレーズの朝市が、秋田県由利本荘市にある。開場時間は午前3時だ。
真っ暗な空に、細身の月がぽつんと浮かぶ。本荘駅前朝市が始まる時間は、朝よりも夜に近い。11月中旬の午前3時、JR羽後本荘駅近くの市場を訪れると、「朝市」と書かれたのぼりが夜道にはためいていた。
「いま来たばかり」という管理人の繁野正倶(まさとも)さん(73)に開けてもらい、中に入る。市場が立つ場所は私有地で、繁野さんは出店者たちが地主に払う店賃(たなちん)をとりまとめている。場内の1区画を1日350円で借りる人もいれば、シャッターや水道付きの店を構えて月ごとに料金を払う人もいるという。
「おはようございまーす」。薄暗い場内に繁野さんの声が響き渡った。
「加川鮮魚」と書かれた看板の下で、ストーブを囲んで暖をとる3人がいた。NHKのラジオ深夜便から、由紀さおりの「夜明けのスキャット」が静かに流れている。
母の代から加川鮮魚を営む宮下悦子さん(72)が、夫と息子に語りかけていた。「こんだけ荒れるときねんだけどな」。しけ続きで1週間近く船が出ておらず、魚が入ってこない。店先に並んだ品はわずかで、タラコやイクラなど冷凍で保存が利くものばかりだ。
悦子さんの母はその昔、20…
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