民間の研究組織「日本創成会議」が2014年、「消滅可能性都市」を発表し、それを契機に第2次安倍政権は「地方創生」を打ち出した。「消滅」の衝撃から6年、地方の状況は「地方創生」で改善したのか。同会議座長で、内閣府の「まち・ひと・しごと創生会議」委員を務める増田寛也・元総務相(68)に尋ねた。
ますだ・ひろや 1951年生まれ。旧建設省を経て、95年から岩手県知事を3期務め、2007~08年に第1次安倍内閣などで総務相。現在は東大公共政策大学院客員教授のほか、今年1月から日本郵政社長。
――日本創成会議は「40年までに全国の約半数の896自治体で20~39歳の女性が50%以上減り、将来は消滅する可能性がある」などと指摘し、少子化対策や東京一極集中の是正の政策を提言した。これが「地方創生」につながった。当時どんな思いがあったのか。
08年までは人口が増えていたので、人口減少への危機感が薄く、注意喚起もできていなかった。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が5年ごとに出す市区町村別の人口予測(日本の地域別将来推計人口)を有効に使い、人口を切り口に自治体が持続可能かどうか議論しよう、という狙いだった。あえて消滅という言葉を使ったのは、世の中の関心を高めるためだ。
――「地方創生」の6年間を振り返ると。
過疎地の人口減少がさらに進む一方、東京一極集中が加速した。日本は「二極化」している。
未公表だが、15年の国勢調査を基に、社人研が18年に発表した新たな人口予測から「消滅可能性都市」を改めて算出すると、896から927に増えていた。
国の総合戦略に「希望出生率1・8」など総合的な施策が盛り込まれたのは良かった。だが、のちに「子ども・子育て本部」などができると、人口減に関係する少子化や働き方の問題が切り離された。地方創生の中で一体的にやるべきだった。また、地方創生の交付金は呼び水にはなるが、持続性がない。自治体間の獲得競争になり、官主導がより強まってしまった。
拡大する増田寛也氏=東京都千代田区、川村直子撮影
――東京一極集中はどうすれば是正できるのか。
東京一極集中は、大学進学と就職時の大量の転入が主な要因だ。終身雇用、新卒一括採用といった問題と深く関わっている。
東京都は新型コロナウイルスの影響で、10月まで4カ月連続で転出超過になった。今後はテレワークなど新たな働き方が定着するかどうかにかかっている。
記事の後半では、地方が今後どう人口減に向き合うかを尋ねるとともに、地方の実情をルポします。東京まで電車で1本ながら人口減少が進む神奈川県のある市、独自の工夫で人を呼び込む北海道、徳島県のケースを紹介します。
――地方自治体は人口減にどう…