日本でうごめくロシアスパイ 名刺交換から会食、土産…

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小早川遥平
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 東京五輪パラリンピックを標的としたサイバー攻撃の疑惑が10月、浮上しました。容疑者として英国外務省が名指ししたのが、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)です。ロシアは一貫して関与を否定していますが、GRUには2016年の米大統領選挙をめぐる世論操作や18年に英国で起きたロシアの元スパイ毒殺未遂事件でも関与が取り沙汰された過去があります。この組織はいかなる目的でどんな活動をしているのか。謎のベールに包まれた実態について、日本で接点を持つ2人の識者に聞きました。

戦前から情報戦展開

 まずは、匿名を条件に取材に応じた警視庁外事警察OBの話を紹介します。

 ――GRUとはどんな組織ですか。

 ロシア軍で情報分野を担当する部署です。旧ソ連時代から続く組織で、日本を含めて国外には大使館の駐在武官という肩書で人を派遣しています。

 ――旧ソ連時代のスパイでは「ゾルゲ」が有名ですね。

 はい。リヒャルト・ゾルゲもGRUの管轄下に置かれ、太平洋戦争開戦前にドイツと日本の対ソ参戦をめぐって情報戦を展開しました。今でも多磨霊園にあるゾルゲの墓にはGRU関係者が参拝に訪れます。

 ――GRUがお墓参りですか。皆さんには誰が関係者だか分かるのですか。

 ソ連がドイツに勝利した5月には毎年、ロシア大使と陸海空軍出身の大使館員が訪れます。彼らの中の一大行事で、みな制服姿で参列するので、我々はそこで捜査資料を作ります。彼らも見られていることは百も承知です。

 ――プーチン大統領も情報機関の出身として知られていますね。

 プーチン氏はGRUとライバル関係にある旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身です。主にソ連国内の反共産主義者を取り締まっていた機関で、ソ連崩壊に伴い、1991年に解体されました。プーチン氏は国内防諜(ぼうちょう)・保安を引き継いだ組織の長官を務めました。旧KGBの流れでは、国際諜報(ちょうほう)を担うロシア対外情報庁(SVR)も有名です。米国民を装い、核兵器開発に携わる米政府職員らに接触したなどとされ、2010年に米国で逮捕されたアンナ・チャップマンさんは「美人スパイ」として話題になりました。SVRとGRUとは今もライバル関係にあります。

 ――GRUとSVRは、日本でどのような情報を収集しているのでしょうか。

 GRUは軍の組織ですから…

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