パリで警官が無抵抗の黒人を殴打 動画拡散で政府に批判

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パリ=疋田多揚
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 フランスで警察官3人が無抵抗の黒人男性に集団暴行を加える動画が拡散し、政府が猛批判を浴びている。警官は当初「(男性に)殴られ、拳銃を盗まれそうになった」と説明したが、動画で虚偽だった疑いが強まり、27日に拘束された。国会では、警官の顔の撮影を規制する法案が審議中で、法案は修正に追い込まれそうだ。(パリ=疋田多揚)

 暴行を受けたのはパリの音楽プロデューサー、ミシェル・ゼクレールさん(41)。ゼクレールさんの仏メディアへの証言や弁護士の説明によると、21日夜、パリ市内の勤め先のスタジオに入ろうとしたところ、3人の警官に職務質問を受けた。マスクを着けていなかったためという。ゼクレールさんが罰金を避けようとスタジオに入ると、3人が押し入ってきた。5分間にわたって、頭部や顔を繰り返し警棒で殴り、ひざ蹴りを加え続けた。

 ゼクレールさんは無抵抗で、「最低のニグロ(黒人)め」と差別用語でののしられた。3人を本物の警官だと思えず「警察を呼んでくれ」「助けて」と叫び続けたという。

 異変を察知した階下のミュージシャン仲間が駆けつけ、いったんは3人を外に出したが、応援に駆けつけた別の警官がドアをこじ開け、室内に催涙弾を投げ込んだ。たまらず両手を上げて外に出たゼクレールさんを警官が再び暴行した。仲間が「カメラ!」と叫び、住民が動画の撮影を始めたのに気づいてようやく暴行をやめ、ゼクレールさんを警察署に連行したという。

 仏メディアによると、警察は裁判所に、ゼクレールさんの拘束理由を「暴力を用いて警察官に反抗し、拳銃を盗もうとした」とする書面を提出した。しかし、ゼクレールさんの証言と暴行の一部始終が撮影された動画を仏ネットメディア「ループサイダー」が26日に報道。警察官はスタジオに監視カメラが設置されていたのに気づいていなかった。

 催涙弾を使った警官を含め4人の警官が27日、虚偽公文書を作成し、人種差別的な集団暴行を加えた疑いで、警察の監察部門に拘束された。ゼクレールさんの弁護士アフィダ・エルアリさんは朝日新聞の取材に「動画が撮影されていなかったら彼は今ごろ刑務所にいただろう」と語った。ゼクレールさんは頭を2針縫う裂傷など全治6日間のけがを負ったという。

法案修正は不可避か

 マクロン大統領は27日、今回の事件について「恥ずべき映像だ」とツイートした。だが、市民らの批判の矛先は、警官の顔の撮影を規制するグローバルセキュリティー法案の成立を目指す政府に向かっている。

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