「くさやの干物」と評した三島由紀夫の歌舞伎愛

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増田愛子
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 三島由紀夫(1925~70)が世を去って50年を迎えた。その生涯で、三島は6本の歌舞伎劇を書いた。そこには古典の本質を見極め、現代に活路を探った作家の思考の跡が読み取れる。

 1970年、三島は国立劇場の理事として、歌舞伎俳優養成所で特別講義を行った。10~20代に耽溺(たんでき)した歌舞伎を「くさやの干物」に例え「非常に臭いんだけれども、美味(おい)しい妙な味がある」と評した。この感覚が、三島の歌舞伎世界を貫く。

 第1作「地獄変」は53年に歌舞伎座で上演された。松竹の依頼で芥川龍之介の小説を劇化するにあたり採用したのは、江戸時代以来の義太夫狂言の様式。人物の激しい感情を表す、三味線のリズムにのった演技やセリフ術が特徴だ。三島は国文学の豊富な知識を生かし、物語を進める義太夫節の詞章も自ら執筆した。ト書きには、歌舞伎独特の伴奏音楽の使用も書き込んでいる。

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 当時の歌舞伎は、古典の封建…

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