元宝塚の母103歳 もう少しあなたの子どもでいさせて

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河合真美江
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 体が弱っても、母の性格が変わることはなかった。

 「きょうは落ち着いているよ」。母と同居する兄から電話で聞き、高山市子さん(78)は9月上旬、大阪府河内長野市へ向かった。

 ベッド脇にひざをつき、のぞきこんだ。「よう来たね」。迎えてくれた声は聞きとれないほど、か細い。マスクをした自分の顔を母の口元に寄せた。「いままでありがとう」と母はささやき、白い封筒を渡そうとしてきた。ふだん触ることのない厚み。きっとお金だ。「頭がしっかりしているうちにね。ほんの気持ち」と言う。

 受け取れない。返そうとしたが、間もなく103歳になる母の力は驚くほど強く、押し返せない。満足に食事もできず点滴に頼っているのに。「わかった、わかった」。こんなときでも変わらない意思の強さに、根負けした。その1カ月後、母は入院した。

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