日本で生まれ、日本で育った在日コリアン。自分って何? 今の世の中ってどうなってる? 美術を通じてそんな問いを続ける生徒たちを追いました。
いま子どもたちは:等身大のキャンバス【上】
「私はこの『コロナオール』という作品を制作したんですけど」
12日、東京都北区にある東京朝鮮中高級学校の体育館ホール。高級部3年の河慶恵(ハキョンヘ)さん(18)が市販薬を模した箱を手に語り始める。今春、コロナ禍でマスクなどの買い占めが相次いだ。「もしでたらめな薬でも、新型コロナが治るという薬が出たら買い占められるんじゃないかなと考えました」
視線の先は、同学年で部長の宋泰碩(ソンテソ)さん(18)が持つiPad。この日は、東京で開催される全国の朝鮮学校美術部の作品展の最終日で、展示への支援を募るため動画を撮影していたのだ。コロナ禍で重要な展示二つが中止され、部員らが秋以降にかける思いは強い。来年1月の部展「はじめての日常」では大きな会場を借り、クラウドファンディングで支援を募る(https://camp-fire.jp/projects/view/327224)。
同校は、日本で初の在日朝鮮人中等教育学校として、1946年に開校。授業はほぼ朝鮮語で行われ、朝鮮史などの民族教育のほか日本の教育に準じた内容を学ぶ。生徒数は中級部、高級部の計442人。部活動は強豪のラグビーやサッカー、舞踊などが知られる中で、美術部は異彩を放っている。
「ナァ(私)は朝鮮人だけど…」
「自由なんで。ウリハッキョ(私たちの学校)の中で変な人たちの集まりっていうか」。旧校舎2階にある部室で、慶恵さんが教えてくれた。
部員は高級部7人、中級部2人。集中して絵筆を動かす生徒もいるが、椅子に座りスマホで何やらずっと検索する女子も。現代アートと言うのか、砕いたビー玉をジャラジャラとガラスのボトルに流し込み、ニヤニヤする男子。制作の手を止め、2人でふざけあう男子もいる。
慶恵さんが制作中の絵画はチマ・チョゴリを着る女性の絵だが、色彩は日本の着物に近い。「ナァ(私)は朝鮮人だけど、考え方や価値観は日本人に近いと思う。そのあいまいさを表現したくて」
「なぜ日本語を話せるんですか」と尋ねられ
大きな展示は年4回。部員は…
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