妻を殺害され21年 借り続けた現場アパートに希望の光

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聞き手・小松万希子
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 21年前の11月、名古屋市西区で主婦高羽奈美子さん(当時32)が殺害された。夫の悟さん(64)は事件の解決を願いながら、現場のアパートを借り続けている。犯罪被害者週間(25日~12月1日)に合わせ、遺族支援や捜査、報道への思いを聞いた。

 名古屋市西区の主婦殺害事件 1999年11月13日午後2時半ごろ、西区のアパートで高羽奈美子さんが首を刃物で刺されて亡くなっているのが見つかった。一緒にいた当時2歳の長男は無事だった。玄関に残された血痕のDNA型鑑定などから、犯人は血液型B型の女とみられる。解決につながる有力情報の提供者に支払われる「捜査特別報奨金」300万円の対象。情報は西署(052・531・0110)へ。

 奈美子が殺されたのは、犯罪被害者等基本法ができる5年前で、被害者同士の自助の会もほとんどなく、支援の動きは進んでいませんでした。犯罪被害者給付金は支給されました。370万円でした。

 事件から10年後、殺人事件の遺族らでつくる「宙(そら)の会」の設立に携わり、代表幹事をしています。様々な人と意見を交わすなかで浮かび上がったのは、民法上、加害者が償いから逃れられる仕組みの理不尽さでした。

 家計を支える一家の父が殺されたら……。遺族給付金は不十分な場合が多いです。残された家族は生活もままならない。

 加害者に損害賠償訴訟を起こすことはできます。民事で加害者に償いを求められる。

 ところが、賠償を命じる判決が出ても、被告に支払い能力がないなどの理由で、判決に実効性がないことがほとんどです。

 大黒柱を殺され、残された子どもが経済的理由で進学を諦める。そんなことがあってはやりきれない。国が賠償を一時的に肩代わりし、加害者から強制執行で徴収する制度の確立を、国に求めています。

玄関の血痕「捜査上のことで言えませんでした」

 事件後、遺品整理のためアパートに足を運んでも、何一つ片付けられませんでした。CD一枚でも「松田聖子が好きだった」と思い出がよみがえり、捨てられない。「家賃さえ払えば」と借りていました。

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