世界に一枚? 異色の曼荼羅 腕6本の地蔵と小地蔵1万
腕が6本あるお地蔵様と、それを囲む1万以上の小さなお地蔵様――。そんな珍しい絵画「地蔵曼荼羅(まんだら)」が、湖南三山の古寺、長寿寺(滋賀県湖南市東寺5丁目)にある。しかし、傷みが激しい。寺は文化財指定を目指して修理しようと、参拝者から寄付を募り、お礼に記念の朱印帳を贈る取り組みを始めた。
地蔵曼荼羅は絹地で縦134センチ、横84センチ。作風から室町時代(15世紀)の制作とみられる。阿修羅像のように六臂(ろっぴ)(6本の腕)の地蔵菩薩が中央に描かれている。周囲には指先ほどの小さな地蔵が、集合写真のように整然と並ぶ。1万1851体もあるという。
曼荼羅は、一般には知られていない。2016年に先代の父を継いだ住職の藤支良道(ふじしりょうどう)さん(48)も存在は聞いていたが、詳しくは知らなかった。
19年、この曼荼羅を以前調査した県立安土城考古博物館の学芸員、山下立(りつ)さん(60)が寺を訪ねた際、曼荼羅が話題になった。
寺の蔵の奥に、それらしい巻物がしまわれていた。「もしかしたら」と、藤支さんが慎重に開くと「すごいものが出てきた」(藤支さん)。地蔵菩薩の腕は通常2本。見たこともない絵で、迫力もある。
「日本に、世界に1枚しかない絵かもしれない」
修理をして、多くの人に見てもらいたい。調べると、修理代は100万円ほどかかるとわかった。
地蔵は、仏教の教えでは人々を救う存在だ。1万を超す小地蔵を見て、藤支さんは「多くの方から少しずつ浄財を集めて直すのが良いのでは」と思った。
「地蔵曼荼羅修復プロジェクト」を10月に開始。寄付は1口3千円で、お礼用に地蔵曼荼羅を描いた朱印帳を2種類用意した。若い世代を意識したスマートなデザインだ。
寄付は寺で受け付ける。境内はいま紅葉で彩られ、地蔵曼荼羅のレプリカも30日まで展示中だ。今後はインターネットで募金するクラウドファンディングも検討する。
藤支住職は「室町時代からひそやかに伝えられてきた曼荼羅に込められた思いをくみ取り、次世代に伝えていくのが私の役目です」と話す。問い合わせは長寿寺(0748・77・3813)へ。(筒井次郎)
6本の腕と小地蔵が意味するものは
地蔵曼荼羅は何を意味するの…
【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら