藤井聡太、沈黙の25秒後 記者「えたいが知れない…」

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高津祐典
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 「身震いが止まらなかった」。藤井聡太二冠(18)=王位・棋聖=の師匠、杉本昌隆八段(52)には忘れられない絶妙手がある。「焦点の7二銀」。あまりに感動したので、杉本八段はあわてて図面に書き留めた。妙手を編み出したのがわずか8歳の少年だったからだ。

 「選ばれた才能の持ち主にしか指せない」。杉本八段は少年の非凡さを悟った。

 やがて少年は14歳でプロ棋士になり、数々の絶妙手を残すようになる。藤井二冠の幼少期からの軌跡をたどったルポ『藤井聡太のいる時代』(朝日新聞出版)に携わった朝日新聞の村瀬信也記者は、藤井二冠の妙手が「サッカーで言えばオーバーヘッドのゴール、野球なら逆転満塁ホームランのような華のある手」と説明する。「それを大一番でやってのける。普通の人ができないことを軽々とやっているように見えます」

 8歳の時の「焦点の7二銀」には、その才能の片鱗(へんりん)が輝いていた。練習対局を終えた藤井二冠は、感想戦でこの手を指摘したという。図面を村瀬記者が解説する。

 「焦点というのは、駒がたくさん利いているところを指します。この手は、相手の駒が利いているところに駒を捨てる手。リスクがあります。この手を指しても、先手が有利なわけではありませんが、相手の駒がたくさん働いているところに捨てる手なので鮮やかです。普通はAの駒で取るとダメだけれど、Bの駒なら大丈夫ということが多い。でも、この手はどれで対応しても自分の狙いが実現します」

 もし目の前で小学生がこの手を指したら、将棋記者歴10年、将棋アマ四段の村瀬記者はどう感じるのだろう。

藤井聡太二冠を取材する記者が「得体の知れないものと対峙しているような気がした」と振り返る場面があります。取材の裏話から、師弟関係や王将リーグの苦戦の背景などを探ります。

 「軽々しく使うのはどうかと…

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