南米から見たトランプ氏「ポピュリストの肥やしだった」
米大統領選は、民主党のバイデン前副大統領が、共和党のトランプ大統領を破り、当選することが確実となった。「ポピュリスト」と呼ばれ、数々の慣例を打ち破ってきたトランプ氏の4年間をどうみるのか。歴史的にポピュリストが国のトップに立つことが多かったラテンアメリカの政治史に詳しい、ブラジルのオリバー・ストゥンケルFGV大学准教授(国際関係論)に聞いた。
Oliver Stuenkel ブラジル・FGV大学准教授(国際関係論)。新興国、特にブラジル、インド、中国を研究対象とし、新興国が世界に与える影響などを分析。スペイン紙「エルパイス」などのコラムニストも務める。
ラテンアメリカ化した米国
――米国は「民主主義のお手本」を自負していましたが、今回の大統領選では危機に陥りました
「この4年間、私たちが見たのは、『ラテンアメリカ化する米国政治』でした。国民と直接コミュニケーションを取り、国や社会の内部に敵を作るというトランプ氏の行動様式は、中南米の私たちにはなじみのあるものでした。国民と直接つながるために、批判的なメディアを排除することも、ポピュリストの重要な要素です。ベネズエラのチャベス前大統領は国営テレビを使いましたが、トランプ氏の場合はソーシャルメディアでした」
「政治的にも経済的にも世界のアジェンダを導く米国の大統領は、その時代の国際政治を象徴する人物ともなります。私たちは、トランプ氏が色々なことをしたと考えがちですが、彼がやった主なことは『波に乗った』ということです。グローバル化の拒絶、米国内で自国の指導力への疑い、ナショナリズムの台頭。これらが、トランプ氏が体現したものでした」
――トランプ氏が当選してから、ブラジルではボルソナーロ大統領が、メキシコではロペスオブラドール大統領が誕生しました。ともにポピュリストと言われます
「世界には常にポピュリストの種が存在します。チャベス氏の登場は、トランプ氏の出現を必要としませんでした。しかし、トランプ氏がいなければ、ブラジルでボルソナーロ大統領が誕生する可能性はなかったでしょう。重要なのは、トランプ氏が世界の注目を集めたため、ボルソナーロ氏らへの国際的な圧力や批判が弱くなったことです」
「この意味で、トランプ氏は…
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