「つくしの坊やより…」大宏池会のつむじ風、岸田氏揺れ

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笹井継夫 岡村夏樹
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 9月の自民党総裁選で敗れた最古参派閥のリーダーは、厳しい決断を迫られていた。

 自民党総裁菅義偉首相が選出された9月14日の総裁選直後、宏池会岸田派)の会長を務める岸田文雄政調会長は、同派名誉会長の古賀誠元幹事長がいる国会近くの砂防会館を訪れた。

 古賀氏は言った。「板挟みになって困っているだろうから、自立することを考えたらどうだ」。「板挟み」とは、古賀氏と麻生太郎副総理兼財務相という二人の党内実力者のはざまで悩む岸田氏の立場のことだ。

 岸田氏は、かつて宏池会に所属した麻生氏に総裁選での支援を期待するが、同じ福岡を地盤とする古賀氏と麻生氏は、地元の選挙などをめぐり対立。緊張関係にあるとされる。

 「考えさせてください」。後見人とも言える古賀氏からの突然の提案に岸田氏は即答を避けた。

 岸田氏は、総裁選前に麻生氏からも「宿題」を出されていた。岸田、麻生両氏は8月4日夜、東京都内のフランス料理店で会談。古賀氏と距離を取るよう求める麻生氏に、岸田氏はこう理解を求めた。「やるべきことは何でもやるつもりです。ぜひお力添え頂きたい」

 岸田氏は当時、来年9月とみられていた総裁選をめざして戦略を練っていた。だが、安倍晋三前首相の突然の辞意表明によって、岸田氏は麻生氏の宿題に答えられず、麻生氏は菅氏の支援に回った。岸田氏は総裁選に立候補はしたものの、完敗に終わった。

 砂防会館での岸田氏と古賀氏の面会から1週間ほどたった9月24日、再び古賀氏と面会した岸田氏は熟慮したうえでの決断を告げる。「自立したいと思います」

 岸田氏は次の総裁選に向け、麻生氏と連携することを選んだ。その先には、幾度となく浮かんでは消えてきたある構想の実現も見据えていた。同派と源流を同じくする志公会(麻生派)や有隣会(谷垣グループ)と再結集する「大宏池会構想」だ。

 岸田氏の言葉を聞いた古賀氏は、その場で名誉会長を辞める考えを伝えた。

名門派閥である「宏池会」。しかし分裂などで近年、その力は弱まってきました。現状打開を目指す岸田氏ですが、ある発言が波紋を呼び、周囲の思惑にも翻弄されていきます。

 10月5日に東京都内のホテルで開かれた宏池会のパーティー。あいさつに立った岸田氏は力強く宣言する。

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 「宏池会だけでは社会を変え…

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