第5回独自ダネは訴訟記録から 内部告発の力も掘り起こした

有料記事訴訟記録はなにを語る

奥山俊宏
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 特定の担当分野を持たない「遊軍」記者として、私は1990年代から、多くの訴訟記録を読み、それを手がかりに取材してきた。そうしてできた記事のほとんどは、ほかの新聞には載らず、朝日新聞だけに載る「独自ダネ」だ。

 たとえば、「監査の会計士が容認 24億円の架空利益 ヤオハン粉飾 検事調書で発覚」(1999年11月22日)。粉飾決算で損害を被った株主の弁護士が検察から取り寄せた訴訟記録の中に、公認会計士供述調書があった。私はそれを読み、この記事を書いた。

 7カ月後、監督官庁だった大蔵省は、この公認会計士を業務停止とし、所属する中央青山監査法人を戒告処分にした。当時、大手監査法人に行政処分が下されるのは珍しかった。おそらく大蔵省は、記事が出たため放置できなくなったのだろう。株主や証券市場のために企業決算をチェックする立場にあることの責任を監査法人業界に思い起こさせ、緊張感をもたらす効果がこの記事にはあった。

後世に残すべき貴重な訴訟記録が無造作に捨てられたり、活用から遠ざけられたりしています。その実情を検証し、是正への動きを6回にわたって追います。

 「朝銀大阪 粉飾預金100億円以上」(2001年10月18日)の記事は、整理回収機構が朝銀大阪信用組合の旧経営陣を提訴した法廷に提出された、金融検査結果の報告書を根拠に書いた。

 これを手始めに、その年、「…

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