振り込まれるはずの年金が…差し押さえ年間2万人の現実

有料記事介護とわたしたち

山本恭介
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 銀行口座に振り込まれたはずの年金が、なくなっていた……。老後の生活の糧を突然失い、途方に暮れる高齢者が年間2万人近くもいます。しかも、その数は今後さらに増える可能性が高いといいます。そんな苦しい状況に、高齢者がなぜ追い込まれているのでしょうか。

 群馬県に住む無職の男性(72)の自宅に2年前、市役所から1通の通知書が届いた。資産を差し押さえる可能性がある、と書かれていた。

 男性は月約5千円の介護保険料の支払いを1年近く滞納していた。「実際に差し押さえをする段階になれば、事前に役所から連絡があるだろう」。男性はそう考え、放置することにした。

 翌月、銀行に行った男性が通帳記帳をして驚いた。2カ月分の厚生年金11万円が入金されているはずなのに、実際の入金は4万円しかなかった。入金に合わせて、その半分以上が差し押さえられていた。

 あわてて市役所に電話をかけた。「いきなりすぎる。生活費は年金だけ。生きていけないので半分でも返してほしい」。だが、担当者は取り合ってくれなかったという。仕方なく、生命保険と傷害保険を解約し、それで当面の生活費をまかなうことにした。

きっかけは母親の死

 介護サービスを受けている人も、男性のようにいまはサービスを受けていない人も、40歳以上になると介護保険料を毎月、自治体に納めなければならない。大半の人は給料や年金から保険料が天引きされる。だが、年金額が年18万円未満と少なかったり、男性のように事情があったりする人は、自治体に直接保険料を納めている。差し押さえを受けるのは、保険料を直接納付しているものの、一定期間、支払いが滞った人たちだ。

 男性が介護保険料を滞納するきっかけになったのは、母親の死と認知症の父親が介護施設に入居したことだった。

 男性は若いころから建築会社などに勤めた後、60歳で定年を迎えた。その後、父親の年金にも頼りつつ、パートの仕事をして生活費を稼いできた。介護保険料は、自分の厚生年金から天引きされる形で納めた。

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 だが、3年前、母親の他界を…

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