肺がんになった緩和ケア医「僕もあと2年」 母子の覚悟

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松尾由紀
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神戸の在宅ホスピス院長 関本剛さん

 神戸市灘区の在宅ホスピス「関本クリニック」院長で医師の関本剛(ごう)さん(44)は昨秋、肺がんとわかりました。「残りの人生は2年」との診断でした。およそ1千人のがん患者の体と心の痛みに寄り添ってきた緩和ケア医として、また患者として、がんとの向き合い方を聞きました。(松尾由紀)

 病気がわかったのは昨年10月。数カ月前からせきが続いていて、肺のCTの結果ががん以外に考えられないものでした。「まさか」と固まりました。脳への転移もあり、提案された治療を受けても、「半数の人は2年(以内)で亡くなる」との説明でした。

緩和ケアとは

がんなどの生命を脅かす病に直面している患者とその家族に寄り添い、体の痛みだけでなく精神的な苦しみを和らげるためのケア。2007年に始まった国のがん対策推進基本計画に「治療の初期段階からの推進」が盛り込まれ、ケアの提供体制が整えられてきた。がん診療に携わる医療者を対象にした研修会もその一つ。NPO法人・日本ホスピス緩和ケア協会によると、90年度に全国で5施設120床だった緩和ケア病棟は、431施設8808床(19年11月)に増えている。在宅で緩和ケアに取り組む診療所もある。

 がん患者は身体的な苦痛だけではなく、抑うつなどの精神的な痛み、金銭や家族関係などの社会的な痛み、生きる意味を見失うといったスピリチュアルな痛みに苦しむといいます。僕にとっての大きな苦痛は経済面でした。

 治療せずに早く死んだ方が妻と子にお金を残すことができる、とさえよぎりました。積極的に治療と向き合えたのは、働くことで治療費を賄えるなど、死後も含めた経済的な概算がわかってからです。

患者さんに心から共感 診療いっそう充実

 患者となって、新たに気づいたことがあります。

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 たとえば、薬。分子標的治療…

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