企業が自らメディアを持ち、消費者や顧客にお役立ち情報などを届ける「オウンドメディア」が変革期を迎えている。発信力を知名度アップに生かす企業がある一方、魅力あるコンテンツの発信を続けられずに閉鎖する動きも目立つ。(杉浦幹治、池上桃子、赤田康和)
開発が進む月面探査車のイメージ映像の前で、トヨタの技術者がインタビューに応じる。「ここ(月面)で育んだ技術は地球にフィードバックされる。地球のためにプラネットレベルで貢献していきたい」。そんな答えを引き出した「編集長」は、俳優の香川照之さん。トヨタのオウンドメディア「トヨタイムズ」のサイトに公開された動画の一コマだ。
立ち上げは昨年1月。きっかけは、豊田章男社長が東海地方で出演したラジオ番組。取引先などから感想が寄せられたことに手応えを感じ、トップダウンで決めたという。
実際の編集長を含め、専従の社員2人と4、5人の社員がサイトを運営する。年間約180本の記事を発信し、ユーチューブの公式チャンネルには約14万人が登録している。動画「生産量を『100倍』にしたトヨタ生産方式の秘密」は約150万回再生された。
「オウンドメディア」が注目を集めたのは、2010年ごろからといわれる。実業家の横山隆治さんが同年に発表した著書「トリプルメディアマーケティング」で、マスメディアなどに広告費を払って発信する「ペイドメディア」、SNSなどで消費者ら第三者が発信する「アーンドメディア」とオウンドメディアの三つのメディアがマーケティングの核になると指摘した。
月刊「宣伝会議」の谷口優編集…