「月よ見てくれ」 特攻隊員、短冊に残した魂の叫び

有料記事戦後75年特集

大滝哲彰
[PR]

――思ひ出を 寮に残して 空を征(ゆ)く

――国のため何ぞ命を惜しからめ 散りて甲斐(かい)あるこの身なりせば

 敗戦間近、出征を前にした特攻隊員が直筆で残した34首の「辞世の句」を、戦後75年にわたって保管してきた女性がいます。隊員らが暮らしていた寮で生活をともにしていた岡出とよ子さん(80)=三重県伊勢市。それぞれの句に刻み込まれた、特攻兵たちの重い「叫び」とは――。

 岡出さんの父、喜作さんは1943年、三重県の宇治山田市(現・伊勢市)にあった明野陸軍飛行学校を出た将校が入る寮の管理を引き受けた。市内の一軒家を買い取って、寮名を「攻空(せくう)寮」とした。とよ子さんも3~5歳の間、両親と妹とともにこの寮で暮らした。

 寮では、毎晩のように宴会が開かれ、歌声や笑い声が響いていたのを記憶している。これから出征していく隊員の別れの宴(うたげ)だった。

記事の後半で、全34首を紹介しています

 「戦も何も知らない少女だった私は、音と騒ぎ声だけが今も耳に残っています」

 宴の翌朝には、玄関に喜作さんや女中らが並び、隊員を送り出した。

 ある日、これから送り出される隊員の一人に、玄関で強く抱きしめられた。

 「とよ子ちゃん、行ってくるよ」

ここから続き

 その隊員は耳元で言った。と…

この記事は有料記事です。残り1765文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

戦後75年特集

戦後75年特集

2020年は終戦75年の節目です。あの時のことを語れる人は減ってきています。まだ、間に合います。戦争を知る人々からのバトン、受け取りませんか。[もっと見る]