第9回トランプ氏の二つの誤算 恐怖と嫌悪のマーケティング

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 どんな商品をどう宣伝すれば、よりたくさん売れるのか。そんな商品マーケティングの視点からアメリカ政治を研究する埼玉大学の平林紀子教授は、今回のアメリカ大統領選挙でトランプ大統領には、マーケティングの観点から二つの「誤算」があったとみています。「不動産王」と呼ばれる実業家出身のトランプ氏にとって、マーケティングは得意分野のようにも見えますが、いったいどういうことなのでしょうか。

 ――マーケティングと聞くと「宣伝」のイメージが強いですが、政治とはどんな関係があるのですか。

 商品を売るときは、商品を作り、それを宣伝します。ただ、売り手が売りたい商品でも、消費者がそれをほしいとは限りませんよね。消費者が求めているものを商品に反映しないといけません。政治も同じで、単に自分の意見を主張したとしても、なかなか受け入れられません。そこで政治家が有権者との接点を探そうと、政治にマーケティングの考えを積極的に用いるようになりました。

 ――例えば、選挙ではどのようにマーケティングを進めていくのでしょうか。

 まずは候補者や周りの環境を分析します。候補者の強みや弱み、追い風や逆風になる要素は何か。候補者の競争力の比較と査定をします。次にターゲットを具体化します。狙いたい各層の特徴を詳しく分析した上で、優先順位をつけていきます。

 その上で商品を開発します。政治マーケティングでは「商品」のことを「プロダクト」と呼びます。選挙でのプロダクトは、候補者が有権者に打ち出す政策やこれまでの業績、候補者のイメージなどをパッケージ化したものです。有権者のニーズを探りながら、これらを作り上げていきます。プロダクトができたらそれをプロモーション(宣伝)します。

 ――なるほど。アメリカの政治ではいつごろからマーケティングが意識され始めたのですか。

 クリントン元大統領の時代に…

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