ダムめぐり慎重な検討求める声相次ぐ 熊本

伊藤秀樹 村上伸一
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 7月の豪雨で氾濫(はんらん)した球磨川流域の治水対策をめぐり、蒲島郁夫熊本県知事は24日、被害が大きかった人吉市の被災者や住民の意見を聴いた。市内2会場で3回の会合を開き、計104人が発言。会合後、民意について蒲島知事は報道陣の質問に「現段階でお答えするのは適当ではない。(意見聴取が)終わった後、コメントする」と述べた。

 川辺川ダムに関しては反対を含め慎重意見が多数だった。住民投票を求める意見も複数あった。ダムの賛否を超え、川底の掘削などの対策を早急に求める声も多かった。

 関根喜美子さん(74)はこの日の初回の会合に参加。今回の災害を防げなかった原因を究明するために専門家や有識者を集めて、様々な角度からの検証が必要だと述べた。「私は被災者として知りたい」

 人吉市下原田町の自宅が屋根まで浸水。全壊の判定を受け、30年住んだ家を失った。今は宮崎県えびの市で仮住まいをしている。「単純にダムありきではないと思う。何が足りなくてこういう被害になったのか。急ぐんじゃなくて筋道を立てて進めてほしい」

 市立中原小PTA役員の50代男性はダム賛否の判断がつかないと明かし、ダムをめぐる対立を次世代に残してはいけないと訴えた。「どこかで造るなら造る、造らないなら造らないと、住民投票なりで決定して進むことが近いうちにできないだろうか」と言った。

 同市のラフティングガイド木本千景(ちひろ)さん(34)は、自身が親しんできた川辺川への思いを語った。高校まで人吉で過ごして進学で上京したが、川辺川と共に生活して子育てしたいとUターンしたという。「30年人吉に住んできたが、ダムを造ってくれという人には会ったことがない」

 一方、城本町内会の城本雄二会長は住民が治水ダムに賛成だったと述べ、治水ダムを求める要望書と署名を提出した。町内会の54世帯に考えを聴き、51世帯が治水ダム賛成だったという。城本会長は「球磨川を自然の川に再生したいなどと言う人は誰一人いなかった。(ダムは)避難の時間が稼げる」と話した。別の町内会会長も「ダムを含めた治水をしっかり考えてもらえれば。まずは命を守って、それから環境のことを考えて」と訴えた。(伊藤秀樹、村上伸一)

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