アメリカ大統領選を前に交渉加速 新START延長へ道

有料記事アメリカ大統領選2020

ワシントン=渡辺丘 モスクワ=喜田尚
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 米ロ間に唯一残る核軍縮条約で、来年2月に期限が切れる米ロの新戦略兵器削減条約(新START)が1年間延長される可能性が出てきた。交渉は難航してきたが、ロシアが米国からの条件を受け入れた。決着に課題も残しながら、11月の米大統領選を前に交渉の駆け引きが加速している。

ロシア「中国の参加は中国自身が決めるべき」

 米国が提示していた1年間の延長の条件は、現在両国が保有する全核弾頭の数を1年間「凍結」して増強しないというもので、ロシアは当初「無条件」での延長を主張していた。米国務省は20日のロシアの受け入れ表明を歓迎し、「米国は検証可能な合意をまとめるために、すぐに会談する用意がある」とした。

 米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、「合意は非常に近い。数日で残りの問題を解決できない理由はない」とする米高官の見方を伝えた。核弾頭数凍結の検証や、弾頭の定義を決めるなどの課題は残っているという。

 決着に近づいた背景には、米大統領選で劣勢のトランプ大統領側が外交成果を急いでいることがある。ロシアに譲歩をさせて「核軍縮の合意」に持ち込みたい考えだ。米国は当初、条約の枠外で核戦力の増強を続ける中国も含めた新たな核軍縮の枠組みにこだわり、新STARTの延長交渉が停滞。ロシアにも中国を説得するよう求めた。だが、核弾頭数がはるかに少ない中国は完全拒否していた。

 米国は8月に延長条件を変更し、中国の即時参加についてはいったん棚上げ。今後の核軍縮交渉で中国の参加を目指すことを米ロ間で約束するという方針に軟化した。一方、今は条約対象外でロシアが多数保有する戦術核弾頭も今後制限の対象とすることの合意も含まれた。今月13日には米交渉責任者のビリングスリー大統領特使が「両政府間の最高レベルで原則合意がある」とした直後にロシア側が否定。決着に前のめりな米国の姿勢が鮮明になった。ロシアが合意を否定したのは「中国の参加は中国自身が決めるべきこと」との立場を変えられず、戦術核を制限対象にすることにも強く反発したからだ。

 今月16日になってオブライエン米大統領補佐官(国家安全保障担当)が核弾頭数の凍結を条件としてロシア側に提案したと明かした。WSJは米ロ両当局者の話として、合意案では中国に言及もしない見通しだとしている。

プーチン大統領「いかなる条件も付けずに」

 5年間の延長を望んでいたロシアは、プーチン大統領が16日、同じ1年延長を提案した上で「いかなる条件も付けずに」と強調した。しかし20日には一転して外務省声明で米提案の受け入れを表明した。1年間は、戦術核弾頭も増強することができなくなる。

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