「今日、アレが来た」橋本治は女子高校生玲奈に語らせた
寺下真理加
「今日、アレが来た。アー、ホントにやっと来たって感じでサ、よかったよかった。心配してたのよねえ」
1977年に橋本治が発表した『桃尻娘』は、主人公の高校1年生、榊原玲奈のこんな独白でつづられていく。
初体験で妊娠したかも。そんな不安も、流すように笑い飛ばすように語る。「あんなのしかいなかったのかしら、あたしも悲劇よネ。でもいいわ、大切な思い出なんかにならなくて、せいせいした」
「男らしさ」「女らしさ」の垣根が薄れ
玲奈の脳内は様々な話題にあふれ、冗舌だ。隠れて夜中に飲む酒の味、男同士の同性愛や美少年への興味……。自分自身の理屈で批評し、ぼやき、妄想を巡らす。78年に出版されると、男性作家が生んだ女子高校生口調は「桃尻語」として話題を呼んだ。
昨年亡くなった作家・橋本治のデビュー小説『桃尻娘』。女子高校生の口調で書かれたのはなぜなのか。謎に迫ります。
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橋本は2016年、朝日新聞…
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