子の放置死、バッシングでは防げない 虐待した母の確信

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中井なつみ 畑山敦子 栗田優美
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 大阪府社会福祉士、辻由起子さん(46)の手元のスマートフォンには、「SOS」を伝えるメッセージが絶え間なく届く。

 親から虐待を受け、身一つで家庭から逃げ出してきた人。児童養護施設を出たあと、仕事に行き詰まって行き場がない人……。辻さんが長女(27)と暮らすマンションには、こうした女性たちが一時的に身を寄せていることが少なくない。

 中でも、力を入れているのは、未婚出産などで孤立感を深めている母子の支援だ。この日も、辻さんのスマホに一通のLINEが届いた。

 「(パートナーと)けんかした。家にいるだけで、またけんかをしてしまう」

 送信は、3年前に1度、当時のパートナーからの精神的なDVに悩み、0歳の子どもを連れて辻さんのところを訪れたことのある女性(23)からだった。

 「うちにしばらく来たら?」

 返事を受け、女性はすぐに子どもを連れ、辻さんのマンションへやってきた。3歳になった子どもは、辻さんのことを「ゆきさん」と呼び、足元に駆け寄ってくる。数日滞在し、親子は笑顔で帰って行った。「実家を頼れなかったり、信頼できる大人が近くにいなかったり。彼女たちにとっての『駆け込み寺』でありたい」

 帰ったあとも、定期的に女性の家まで出向き、近況を聞く。時には、支援者から寄せられた食料や育児用品も持って行く。

 「ゆきさんは、まずは私を信じてくれる」と女性は話す。子どもを妊娠したとき、未婚で、児童養護施設出身だという背景を知った自治体の保健師らは、たびたび自宅を訪れてくれた。ただ、「どうやって育てるの?」「子どもは施設に」といった言葉を投げかけられることが多く、次第に避けるようになった。「周りの大人から、あなたは『ちゃんとした親』にはなれない、という目で見られている気がした。ゆきさんのように無理だと決めつけず、まずは自分たちを守ろうとしてくれる人がいることに、救われている」

原点は10年前の姉弟餓死事件

 辻さんが手弁当で活動を続ける原点は、10年前、大阪市西区のワンルームマンションで、幼い姉弟が育児放棄ネグレクト)の末、餓死しているのが見つかった事件にある。世間では、シングルマザーで家を空けていた母親に対し、「鬼畜」といったバッシングが渦巻いたが、辻さんは胸が締め付けられる思いだった。

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 実は、辻さんが長女を出産し…

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