イスラム学者がコロナ禍で気付いた 大さじ小さじの意義

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聞き手・栗田優美
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 「アヒージョ作ったら大量にオリーブオイルが残ったので、残っていたジャガイモとマッシュルームを投入」「じゅわーじゅわーとなっているところを火を強めてタレを煮詰める…完成」。イスラム研究で知られる池内恵(さとし)・東京大学先端科学技術研究センター教授(47)のツイッターには、中東情勢をめぐる英文の記事やアカデミズムをめぐる議論に混じって、自身の料理の記録が登場する。レシピサイトを活用し、手際よく作っている印象だが、もともと料理が好きなわけではなかったという。

人と会わない中での楽しみに

 ――忙しい中で、とてもまめに料理をされているようです。以前から習慣があったのですか

 「まったくしませんでした。母親が『この子にご飯の作り方を教えなかったことが唯一の心残りだ、自立もできていない』と嘆いたことがあったほど。一人暮らしを始めた時に用意してもらった包丁もまな板も、ほとんど使用しないままでした。コロナ以前は、ほぼ毎晩、各界の人と会食をしていました。調査や国際会議で海外に出張することも多かった。国際会議に出ると、朝昼晩とも仕事で食べることになります。各国の研究者と情報交換をしながら食べる時間が、発表よりもむしろ大事でした。この10年、そんな生活を続けてきたのですが、3月以降、激変しました」

 「海外へ行けなくなり、講義、会議、学会などすべてがオンライン化しました。ちょうどそのころ、責任ある仕事を任され、体調を崩すわけにいかないという状況も生まれました。もし自分に万が一のことがあれば、プロジェクトが立ち上げ段階で頓挫してしまいかねないですし、それに研究分野として『グローバルセキュリティ』を掲げておきながら、自分の安全も守れないのか、と突っ込まれてしまいます。感染のリスクを減らすには外食も避けた方がいいという中で、自分の身を守るため、あるいは『仕事の一環』として料理を始めた、というのが正直なところです」

 ――できあがったものを買う選択もあったのでは

 「時々食べるなら、それでもいいかもしれない。でも、毎日3食まかなうなら、まとめて買い物をして、自分で作るほうが効率がいいですよね。オンラインで会議、授業、会議が続き、時差のある国とつなぐ国際会議は夜中に及びます。複雑な日程の合間に、またはその最中に食べるには、自分で作る方が合っていました。人と会わない生活の中で、料理をすることが楽しみでもありました」

 ――レシピはウェブで探すことが多いですか

 「持ち時間は、仕事の合間のせいぜい40分ほど。不慣れですから、手際よく進められるわけでもありません。限られた時間の中ですので『この料理を作りたい』というよりも、冷蔵庫にある2、3の食材で何ができるかをインターネットでごく短い時間で検索し、出てきたものをほとんど『出たとこ勝負』で作ってみる、という具合です。しばらくやってみて分かったのは、一般の人が投稿しているレシピは玉石混交だということに加え、どうもマヨネーズの使用率が高いですね」

料理メモから選んだのは…

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 「私の好みにより近いのは…

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