UCLA津川友介助教授が考える「御用学者」のリスク 

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聞き手・服部尚
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 新型コロナウイルスの感染拡大や、日本学術会議の会員候補6人が任命されなかった問題は、「専門家」のあるべき姿について疑問を投げかけた。「原因と結果の経済学」などの共著があるカリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)助教授の津川友介さんが、政治とアカデミアのあるべき姿について語った。

 多くの国では大統領や首相などの国のトップが出てきて新型コロナ対応に関する方針を説明していました。しかし日本では、4月に西村康稔氏が新型コロナ対策担当大臣に就任するまでは、政府のだれが対策の意思決定者か分かりにくかったという声があります。

 一方で、専門家が独自に発信する例も目立ちました。SNSを使って専門家会議のグループがリスク・コミュニケーションの専門家を交えて情報発信しましたが、それに対立する意見を発信する有識者たちも出現しました。

 政府と専門家会議の見解が一致しなかった場合もあり、何を信じていいのか分からなくなってしまった国民もいたと思われます。政策立案者である政治家や官僚、そして意思決定に必要な判断材料を提供する学者が十分にコミュニケーションを取り、その結果を国の統一したメッセージとして国民に提供する必要性が明らかになりました。

 もちろん効果的なコミュニケーションは重要です。でも根本的な問題は、その上流にある意思決定プロセスであったと思われます。

 意思決定のプロセスは2段階で進めるべきものです。判断材料である科学的な根拠(エビデンス)が1段階目であり、それをもとに政治的な判断を下すステップが2段階目です。

学者がかかわると「しがらみ」生じる

 学者は基本的にはエビデンス部分の1段階目にのみかかわるべきだと考えます。2段階目に学者がかかわると、色々な「しがらみ」ができてしまい、中立公正な立場でエビデンスを提供することが難しくなる場合があるからです。

 この境界があいまいになると、政策と整合性を取るために、忖度(そんたく)してエビデンスがねじ曲げられてしまう危険性すらあります。

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 エビデンス・ベースド・ポリ…

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